こかじさら作品のページ


千葉県生、中央大学専門職大学院国際会計研究科修士課程修了。出版社勤務を経て2010年よりフリーライターとして執筆・編集。16年「アレー! 行け、ニッポンの女たち」にて作家デビュー。


1.負けるな、届け!

2.翼をください

 


                   

1.
「負けるな、届け! ★★
 (「アレー! 行け、ニッポンの女たち」を改題)


負けるな、届け!

2016年02月
講談社

2019年03月
双葉文庫

(648円+税)



2020/08/08



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25年間真面目に働き、顧客や社員たちの信頼も得てきたというのに、「社長があなたを嫌っているから」というだけの理由で退職を強要された小野寺かすみ
五十路になった途端に広告代理店の会社から紙屑のように放り出され、失業者となり、再就職先を探すもうまくいかず。すっかり落ち込んでいたかすみを救ってくれたのは、新しく知り合った友人の、懸命にマラソンランナーを応援する姿だった。

陶芸教室とで知り合いとなった
川内響子高橋夏子の2人。その高橋から、東京マラソンに出場する川内さんの応援に一緒に行かないかと誘われます。
暇になったので応諾して同行した処、かすみは高橋さんの熱烈な応援ぶりに仰天、それでも必死に追い掛けるうち、いつの間にか自分もフルマラソンを走ってみたいと思うに至ります。
そして、フランスで毎年開催される
「メドック・マラソン」の公式ウェブサイトでついエントリーボタンをクリック・・・。

そしてかすみに刺激されるように、前の会社で同僚、あるいは後輩だった女性たちもランニングを始めるようになり・・・。
彼女たちに共通するのは、女性だからというだけの理由で会社から不当な扱いを受けてきたこと。それは怒りと徒労感。
亀山千秋:かすみの同期。既婚、息子2人を持ちながら今も働き続けているが、要は“客寄せパンダ”。
島崎あかり:後輩。不当な言葉を浴びせられ、結婚退職。
平山貴子:島崎の同期。今も独身のまま勤務。

誰かひとりでも自分を応援してくれる人がいたら頑張れる。
会社で不当な扱いを受けようが、自分の力で走り始めた彼女たちはとても元気。読んでいるこちらまで元気が出てくる気分です。
また、高橋夏子の応援ぶり、メドック・マラソンに出場したかすみの様子、リアルでとても楽しめます。

しかしまあ、かすみたちが勤めていた会社、時代錯誤というかあからさまな女性差別の姿勢には、呆れる他ありません。

                   

2.
「翼をください I wish I had wings ★☆


翼をください

2016年10月
双葉社

(1400円+税)



2020/08/08



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大手総合ファッションメーカー「Fair wind」に入社した女性総合職を主人公とした、新入社員奮闘記かつ、お仕事小説。

主人公の
長島瑞穂は中高とバレーボール部のエースアタッカー。身長は 178cm、健康、そして身体と声の大きさが取り柄?
入社早々怒られてばかり。
何度もくじけそうになりますが、その都度、商品管理部のベテラン社員である
山崎忍に助けられたり、同期の浜田に励まされたりして何とか乗り越えていきます。

しかしまぁ、指導係社員の無茶ぶりはともかくとして、やたら昇進争いにばかりこだわっていたり、それなのに人事評価はおべっかで左右されたりと、山崎が嘆くどおり、会社組織と人事評価というのは常に理不尽なことが多いです。

その中で瑞穂、それなりに成長しているのだろう様子が描かれていますが、ストーリィに瑞穂の主体性が余り感じられないのが気になるところ。
また、終盤、瑞穂をライバルだと言ってくれた同期の八頭身美人=
峰岸さくらの部分については、幾らなんでもその必要があったのかと思わざるを得ません。

題名にある
「翼」、私の好きな傑作の題名(原田マハ川上健一)によくある言葉なので、それだけに惜しむ思いあり。

1.出会い/2.変身/3.思惑/4.脱皮/最終章.友人代表

       


   

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