桂 望実作品のページ No.3



21.僕は金になる

22オーディションから逃げられない

【作家歴】、ボーイズ・ビー、県庁の星、Lady,GO、Run!Run!Run!、明日この手を放しても、女たちの内戦、平等ゲーム、WE LOVE ジジイ、嫌な女、ハタラクオトメ

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恋愛検定、週末は家族、頼むからほっといてくれ、手の中の天秤、我慢ならない女、エデンの果ての家、僕とおじさんの朝ごはん、ワクチンX、総選挙ホテル、諦めない女

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21.
「僕は金になる ★☆


僕は金になる

2018年09月
祥伝社刊

(1500円+税)



2018/10/04



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子供の頃から将棋が強かった姉、賭け事好きの父親、そして何の取り柄もないフツーの僕。
どうしようもなく、けれどどこか愛おしい、40年にわたる家族の物語。

どうしようもない父親を見放し、看護師である母親は父と離婚。
将棋が強かった姉は父親と共に家を出て行き、フツーでしかない主人公は母のもとに。
その主人公が何年かおきに父親と姉を訪ねては、父娘と主人公との歩みの違いが対照的に目に映る、という構成からなる長編ストーリィ。

正業に就かず、姉に賭け将棋をやらせてはその儲けでさらに賭け事に走る。高校もすぐ中退した姉は、将棋好きなためそんな暮らしに特に文句を言う訳でもない。そして、その地で賭け将棋で儲け続けることが難しくなると、その都度引っ越しては住む場所も転々とするという繰り返し。
どうしようもない父と姉ですが、そんな2人を主人公は憎めないでいる。自分が何の取り柄もない人間であるのに対し、姉には特別な才能があるから。
しかし、そんな姉弟の関係は、時間を経るにしたがって変わっていきます。

そんな父と姉、傍から見ている分には面白い存在でしょう。でも一緒に暮らすとなったらやっていられない、と思う筈。
父親を見放した母親の決断は、至極ごもっともなものと言えるでしょう。
でも、どこか憎めない、という存在だから堪りません。

底なしに愚かだけど憎めないという父親、それでもどこか仲の良い父親と姉弟という関係、現在の寓話のようにしか思えません。
その点で、面白く愛しい面もある一方、納得できない思いも残ります。


1.昭和54年(1979年)/2.昭和57年(1982年)/3.昭和60年(1985年)/4.平成元年(1989年)/5.平成6年(1994年)/6.平成9年(1997年)/7.平成23年(2011年)/8.平成29年(2017年)

            

22.
「オーディションから逃げられない ★★


オーディションから逃げられない

2019年02月
幻冬舎刊

(1500円+税)



2019/03/02



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人生とはオーディションの連続、そして私はいつも不合格になることが多かった。だから自分のことを「ついてない人」だと認識していた、という主人公=渡辺展子(のりこ)が語り出すところから、本ストーリィは始まります。

最初は中学入学の時から。親友となった
渡辺久美は、皆が振り返るような完璧な美少女。おかげで展子は・・・。
高校の美術部、就職活動、いつも選ばれず。
やっと自分を選んでくれたと喜んで結婚した
太一は、妊娠してすぐに勤務先が倒産して失職。
やむなく展子は、太一と娘の
と共に実家に同居し、パン職人である父親と一緒にワタナベベーカリーを唯一の居所として懸命に働くのですが・・・。

人生とは長いものですし、一人一人のもの。すべてオーディションだと、他人と自分を比べ、勝ち負けばかりにこだわっていたらさぞ辛いことだろうと思います。
それなのに主人公の展子は、自分が望む幸せとは何なのか、親しい人たちがどんなことを望んでいるのか一顧だにせず、勝つことばかりに囚われて突っ走ってしまう。
ワタナベベーカリーの発展と奮闘、そして挫折という急展開は、それでも十分読み応えがありますが、周りのことを見失っていると本当に危うい、という典型的な例でもあります。
 
展子の何より幸せだったことは、あれだけ勝手しながら、周囲の親しい人たちから決して見捨てられなかったことでしょう。
父親、妹の
華子と(特に)子、夫の太一と娘の恵、そして中学以来親友であり続けた久美、等々。

幸せとは、人から与えられるものではなく、自分自身でつかむもの。さらに言えば、勝ち取るものではなく、自分自身の考え方を切り替えて気づくものだろうと思います。
長い年月の果てに、ようやく展子が自分の幸せに気づくまでのストーリィ。
最後は温かく、幸せな気持ちに満たされる思いです。
決して他人事のストーリィではありませんよね。

   

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