桂 望実作品のページ No.3



21.僕は金になる

22.オーディションから逃げられない

23.たそがれダンサーズ

24.結婚させる家

25.終活の準備はお済みですか?

26.残された人が編む物語

27.息をつめて 

28.この会社、後継者不在につき 

【作家歴】、ボーイズ・ビー、県庁の星、Lady,GO、Run!Run!Run!、明日この手を放しても、女たちの内戦、平等ゲーム、WE LOVE ジジイ、嫌な女、ハタラクオトメ

 → 桂望実作品のページ No.1


恋愛検定、週末は家族、頼むからほっといてくれ、手の中の天秤、我慢ならない女、エデンの果ての家、僕とおじさんの朝ごはん、ワクチンX、総選挙ホテル、諦めない女

 → 桂望実作品のページ No.2

 


             

21.
「僕は金になる ★☆


僕は金になる

2018年09月
祥伝社

(1500円+税)

2021年10月
祥伝社文庫



2018/10/04



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子供の頃から将棋が強かった姉、賭け事好きの父親、そして何の取り柄もないフツーの僕。
どうしようもなく、けれどどこか愛おしい、40年にわたる家族の物語。

どうしようもない父親を見放し、看護師である母親は父と離婚。
将棋が強かった姉は父親と共に家を出て行き、フツーでしかない主人公は母のもとに。
その主人公が何年かおきに父親と姉を訪ねては、父娘と主人公との歩みの違いが対照的に目に映る、という構成からなる長編ストーリィ。

正業に就かず、姉に賭け将棋をやらせてはその儲けでさらに賭け事に走る。高校もすぐ中退した姉は、将棋好きなためそんな暮らしに特に文句を言う訳でもない。そして、その地で賭け将棋で儲け続けることが難しくなると、その都度引っ越しては住む場所も転々とするという繰り返し。
どうしようもない父と姉ですが、そんな2人を主人公は憎めないでいる。自分が何の取り柄もない人間であるのに対し、姉には特別な才能があるから。
しかし、そんな姉弟の関係は、時間を経るにしたがって変わっていきます。

そんな父と姉、傍から見ている分には面白い存在でしょう。でも一緒に暮らすとなったらやっていられない、と思う筈。
父親を見放した母親の決断は、至極ごもっともなものと言えるでしょう。
でも、どこか憎めない、という存在だから堪りません。

底なしに愚かだけど憎めないという父親、それでもどこか仲の良い父親と姉弟という関係、現在の寓話のようにしか思えません。
その点で、面白く愛しい面もある一方、納得できない思いも残ります。


1.昭和54年(1979年)/2.昭和57年(1982年)/3.昭和60年(1985年)/4.平成元年(1989年)/5.平成6年(1994年)/6.平成9年(1997年)/7.平成23年(2011年)/8.平成29年(2017年)

            

22.
「オーディションから逃げられない ★★


オーディションから逃げられない

2019年02月
幻冬舎刊

(1500円+税)



2019/03/02



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人生とはオーディションの連続、そして私はいつも不合格になることが多かった。だから自分のことを「ついてない人」だと認識していた、という主人公=渡辺展子(のりこ)が語り出すところから、本ストーリィは始まります。

最初は中学入学の時から。親友となった
渡辺久美は、皆が振り返るような完璧な美少女。おかげで展子は・・・。
高校の美術部、就職活動、いつも選ばれず。
やっと自分を選んでくれたと喜んで結婚した
太一は、妊娠してすぐに勤務先が倒産して失職。
やむなく展子は、太一と娘の
と共に実家に同居し、パン職人である父親と一緒にワタナベベーカリーを唯一の居所として懸命に働くのですが・・・。

人生とは長いものですし、一人一人のもの。すべてオーディションだと、他人と自分を比べ、勝ち負けばかりにこだわっていたらさぞ辛いことだろうと思います。
それなのに主人公の展子は、自分が望む幸せとは何なのか、親しい人たちがどんなことを望んでいるのか一顧だにせず、勝つことばかりに囚われて突っ走ってしまう。
ワタナベベーカリーの発展と奮闘、そして挫折という急展開は、それでも十分読み応えがありますが、周りのことを見失っていると本当に危うい、という典型的な例でもあります。
 
展子の何より幸せだったことは、あれだけ勝手しながら、周囲の親しい人たちから決して見捨てられなかったことでしょう。
父親、妹の
華子と(特に)子、夫の太一と娘の恵、そして中学以来親友であり続けた久美、等々。

幸せとは、人から与えられるものではなく、自分自身でつかむもの。さらに言えば、勝ち取るものではなく、自分自身の考え方を切り替えて気づくものだろうと思います。
長い年月の果てに、ようやく展子が自分の幸せに気づくまでのストーリィ。
最後は温かく、幸せな気持ちに満たされる思いです。
決して他人事のストーリィではありませんよね。

               

23.
「たそがれダンサーズ ★★


たそがれダンサーズ

2019年09月
中央公論新社

(1600円+税)

2023年08月
中公文庫



2019/10/02



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ふとしたことがきっかけで社交ダンスを習い始めた中年おじさんたち。
60歳で会社を定年退職した
田中武士・62歳はボランティア気分、商社マンの川端諒一・51歳は女性にもてたいという思惑、そして町工場の経営者である大塚正彦・52歳は気分転換。

社交ダンス初心者の彼らがまず送り込まれたのは、米山ダンススタジオ。ひととおりの講習が終わった後、男性たちだけで行った卒業ダンスに拍手を受けて思わず興奮。やる気のない講師の
米山信也に皆で交渉し、男性だけのメンバー16人で競技会出場を目指し、熱心に練習を重ね・・・・というストーリィ。

それぞれ自分の人生が見えてきてしまったという年代。
それが、偶々であろう社交ダンスとの出会いから、新たな挑戦、新たな目標、新たな仲間たちとのチームワークという、新たな局面を手に入れます。
一方、各人それぞれに悩みや迷い、そして鬱屈も抱えています。中でもダンス講師の米山に元気がないのは、半年前に愛妻の悦子を亡くしているため。
それらを振り払うだけの活力が、彼らのダンスの練習から生まれてきます。

最近、中年女性の元気さばかりが目立つストーリィが多いように感じられますが、その中で、中年男性だってまだまだやれるのだゾというメッセージが感じられて、頼もしく、また楽しい。

※社交ダンスというと男女ペアで行うものと思いがちですが、本作で彼らが挑むのは男性だけ16人で行うフォーメーション競技。

登場人物と同世代である私としては、とても元気づけられる気がして嬉しい限りです。

                      

24.
「結婚させる家 the marriage house ★★


結婚させる家

2020年05月
光文社

(1600円+税)



2020/06/05



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40歳以上限定の男女会員を対象とした結婚情報サービス会社<ブルーバール>。主人公である桐生恭子・53歳は、そこで“婚活界のレジェンド”という定評のあるカリスマ相談員。
その恭子が新たに立てた企画は、関連の不動産会社が売れずに抱えている大邸宅を利用し、その<
M屋敷>に交際中の会員を泊まらせてしばらく一緒に暮らさせてみよう、というもの。

M屋敷で、双方の家族らも含めた同居体験を選んだのは、交際中の5組の中高年男女。さて、その結果は・・・。

婚活、まして中高年男女ともなれば、家族も絡んだりと色々難しい処があって当然。ですから、同居体験というのは良いアイデアだと思います、ホント。
そしてその婚活の中から、自分にとって大切なことは何か、自分が求めているものは何だったのか、が浮かび上がってくるという展開が本ストーリィの読み処。

また、カリスマ相談員と呼ばれる恭子自身、実は訳ありの過去をもつ女性。そのため自分を卑下するところが多分にあったのですが、5組の婚活男女との付き合いを通じて、自分もまた前向きに変わっていくところが良い。

中高年男女の、まだまだ続く成長物語、と言って良いのかもしれません。
読み始めた冒頭は月並みな、あるいは面倒臭そうなストーリィと感じたのですが、結末では何やら爽快な気分で読了しました。
やりますねぇ、桂望実さん。

                  

25.
「終活の準備はお済みですか? ★★


終活の準備はお済みですか?

2021年05月
角川書店

(1600円+税)

2024年07月
角川文庫



2021/06/12



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“終活”、最近よく聞く言葉ですが、私ももう他人事とは言っていられません。
どんな終活があるのか、行われるのか、現実的な関心も合わせての読書です。

リストラされた三崎清が再就職したのは、葬儀会社<
千銀堂>。しかし、人口減少等々で経営が厳しくなっている中、木村朋子社長が始めたのは、終活のアドバイスを無料で行う<満風会>という子会社。三崎はそこで「終活相談員」に。
木村社長曰く、人生は定期的に見直しをすべき。お客さんが人生を見直す時にその伴走したい、というのが動機とか。
とはいえ三崎、実際にどうお客に対応したらいいのか戸惑うばかり。その時はまず、「
満風ノート」と名づけられたオリジナルの終活ノートを書くことを客に勧めます。

年代も状況も異なる
4人が、三崎の客として登場します。
当然ながら各章、それぞれの客が主人公となりますが、合間合間で相談員の三崎も第一人称にて登場します。
三崎もまた人生の見直しが必要、ということなのでしょう。
各篇主人公、ならびに三崎の、連作“終活”ストーリィ。
終活の前にまず、自分の人生の見直しを! そりゃ、ごもっともです。

「鷹野亮子・55歳」:仕事一筋、独身、子供なし。どう終活すればいいのか・・・。
「森本喜三夫・68歳」:長兄が認知症? 兄弟3人がとった行動は・・・。
「神田美紀・32歳」:未婚で産んだ子の育児を両親任せだったのに、母親が脳梗塞を発症し。子育て+介護という危機!
「原 優吾・33歳」:思いも寄らぬガン宣告、再発。才能あふれたシェフの終活は・・・。
「三崎 清・53歳」:フィナンシャルプランナーから、70歳で貯金ゼロと宣告され、ショック! どうすればいいのか?

1.鷹野亮子 55歳/2.森本喜三夫 68歳/3.神田美紀 32歳/4.原優吾 33歳/5.三崎清 53歳

                

26.
「残された人が編む物語 ★★☆


残された人が編む物語

2022年06月
祥伝社

(1700円+税)



2022/07/02



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意味が分かりかねる題名ですが、本書を読み進めればその意味は自然と分かってきます。あぁそういう意味だったのか、と。

本作は、行方が知れなくなった大事な人を探す人たちを描く連作ストーリィ。
そこに登場するのは
「行方不明者捜索協会」という民間会社と、依頼人を発見後から2ヶ月間専属でサポートするという、50代のスタッフ=西山静香
探偵、興信所とは少し異なるようです。SNSや死体で発見された身元不明者の情報を掲載している警察のホームページを巡って対象者の行方を探すというのですから。

当然ながら本作では、探した相手は皆、身元不明の死体となって発見されます。
大事な人であればこそ、自分に何かできなかったのかという悔いの気持ちを引きずりかねない。
だからこそ、彼らがどのように生きてきたのか必要がある、そこから自分が納得できる物語を作る必要がある、というのがサポート担当者である西山静香の弁。
 
その意味で、本作は変わった作品ですし、秀逸な着想である、と感じます。
物語が出来てこそ各篇の主人公たちは、過去を整理して、新しい道へ足を踏み出すことができるようです。
そして、亡くなった人たちの人生は決して失われた訳ではない、きちんと足跡を残していたのだと、そこに本作の確かな読み応えを感じます。

「弟と詩集」:母が死去し、上田亜矢子・53歳はずっと音信不通だった弟の平野和也に連絡を取ろうとするのですが・・・。
「ヘビメタバンド」:区役所勤めの樋口智裕・36歳は、大学時代のバンド仲間である岡本涼太に連絡を取ろうとするのですが、他のバンド仲間も彼の消息を知らず・・・。
「最高のデート」関根由佳、10年前に夫の卓が失踪して行方不明のまま。定期的にチェックした警察のホームページで亡き夫の持ち物らしいネクタイ、腕時計を発見し・・・。
「社長の背中」川田剛は、20代の頃に働いていたゲーム制作会社の社長=矢作鈴子に連絡を取ろうとするのですが、会社自体も見つからず・・・。
 
「幼き日の母」:依頼人のサポートをする側だった西山静香本人が、今度は当事者。子供の頃に失踪した母親のバッグが警察のホームページに・・・。
西山静香、その家族を描くこの最後の篇がとくに圧巻です。

1.弟と詩集/2.ヘビメタバンド/3.最高のデート/4.社長の背中/5.幼き日の母

                  

27.
「息をつめて ★★☆


息をつめて

2022年11月
光文社

(1600円+税)



2022/12/20



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土屋麻里、51歳のごく普通の女性・・・である筈なのに、自分の周辺で何か警察ごとが起きる度、仕事を止めて転居、を繰り返している。
まるで誰かの目に付くのを避けるかのように・・・。
当然ながら仕事も、たまたま目に付いたものに就くだけ。パチンコ景品交換所、連れ込み宿の清掃、惣菜店の裏方、訪問介護と、まさに息を詰めるような暮らしぶりです。
でも、一体それは何故なのか?

その辺り、訳も分からないままにスリリング。
麻里は犯罪者なのか。しかし、どの仕事も真面目に働き、かつ有能である故にどこでも高く評価される。なのに・・・。
中盤になって、ようやくその理由が語られます。
自分自身は何の罪も犯していなくても、親というだけでその罪から逃れられないのでしょうか。いや、親子のしがらみから抜け出すことはできないことなのでしょうか。

そして終盤、麻里を待ち受けているのはもっと恐ろしい運命なのです。
その挙げ句に麻里が甘受しなくてはならないのは、どんな結末なのか。
そこに至るともう、ハラハラし通しです。スリリングどころか、本当にもう怖い。
そこから抜け出るため、麻里が選んだ方法は・・・。

この結末、麻里の選択については賛否両論いろいろあると思われますが、私としては納得できるものです。
まさに衝撃的なストーリィ。好みの問題があるかと思いますが、私としてはお薦めしたい一冊です。

             

28.
「この会社、後継者不在につき ★★


この会社、後継者不在につき

2023年11月
角川書店

(1750円+税)



2024/01/01



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本作題名、如何にも現代社会においてよくありそうな問題です。
かなりシビアな展開になるのかなと思いきや、お仕事小説的なエンターテインメント作品になっています。
というのは、
北川という相当に型破りな中小企業診断士が登場してくるおかげ。
各篇で思い悩む経営者たちに、思い切った提案をしてくるのですが、そこからの展開が面白いという訳でエンターテインメント。

第一章の主人公は、S県でケーキの製造販売をしている会社を経営している
岡村正人
二人の息子が同社に勤務していますが、長男が真面目で堅実であるのに対し、次男は行動力に富んでいるが奔放。どちらを次期社長に選ぶべきか、というのが当面の悩み。

第二章の主人公は、女性向けオリジナルブランドバッグの販売会社を経営する
高林菜穂。事故で夫と息子を亡くしてから立ち上げた会社のため譲るべき親族はおらず、3人の部長が後継者候補。
しかし、いずれとも者足らず。

第三章は趣向が異なり、社員歴20年になる
伊藤浩紀
職人芸による包丁製造会社のオーナー社長が急死。跡を継ぐべき人物もおらず、何とドイツの会社に買収されることになる。
ドイツ人社長がこれからをどう考えているのか、社員が上から下まで動揺。さて、伊藤はどう動く?

      

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