井上尚登
(なおと)作品のページ


1959年神奈川県生、東海大学工学部卒。会社員を経て放送作家。99年「T.R.Y」にて第19回横溝正史賞を受賞。

  


 

●「厨房ガール!」● ★☆




2007年09月
角川書店刊

(1600円+税)

2017年07月
角川文庫化



2007/10/09



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舞台は東京・田園調布にある“SWAT”
SWATといっても警察の狙撃班とは無関係、“セント・ワイズ・アカデミー・トラスト・クッキング・スクール”の略で、この世界では有名なフランス料理学校とのこと。
そこに新しく入学した一人が唐沢理恵。こちらは警察と無関係ではなく、前身が婦人警官。とはいっても生徒仲間が囃し立てる殺人課の刑事でも何でもなく、書類整理と少年補導ぐらいしか経験はない。ただし緊張するとつい相手を合気道で投げ飛ばしてしまうという悪い癖あり。
そんな理恵を主人公に、料理学校で仲間たちと出会う事件の数々を解決してみせるという連作短篇ミステリ。

料理学校の生徒たちと一口にいっても、元ヤンキー娘がいたりプロの料理人がいたり等々、年齢も経歴もバラエティに富む。
そんな仲間達がワイワイと協力し合って、授業どころか事件にも関わっていくところが本書の面白さです。
そしてもうひとつ、学校での実習場面等料理に関わる部分。仏料理絡みの小説としては海老沢泰久「美味礼讃には及ばないものの、レストランの厨房に入り込んだような気分が味わえる楽しさも勿論見逃せません。

作者の井上さんによると、「学校を卒業したひとたちが、もういちど味わう学園生活」を描きたかったとのこと。
学園+厨房、そしてちょっぴり恋もある連作短篇ミステリ。
軽快に楽しむことができる一冊です。読書の秋+食欲の秋にはちょうど良いかも。

珊瑚礁コンソメ/重量級パスタ/塩辛ソルト/間違いレストラン/お怒りシェフ/揚げ揚げキッチン/幽霊カラメリゼ

 


  

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