一木けい(いちき)作品のページ


1979年福岡県生、東京都立大学卒。2016年「西国疾走少女」にて第15回「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。現在バンコク居住。

 


                   

「1ミリの後悔もない、はずがない ★★☆
 I have no regrets whatsoever... that cannot be true.


1ミリの後悔もない、はずがない

2018年01月
新潮社刊

(1400円+税)



2018/03/04



amazon.co.jp

R-18文学賞読者賞を受賞した「西国疾走少女」を含む連作5篇を収録したデビュー作。

「西国疾走少女」は、訳ありで貧しい母子家庭に育つ女子中学生の由井が主人公。
学校では貧乏ったらしい服装ということで除け者扱い、帰宅しても父方の叔母からお前たちの所為で実父は人生を損なったと責められる日々。
そんな絶望しても不思議ない状況の中、由井を救ったのは、
桐原という男子同級生に対する恋心。それもあってか、ミカ、金井という同級生とも親しくなり、桐原を含めた親しい仲間を得ることができます。
由井は桐原への恋を大事に育てていきますが、それは桐原側でも同じ。2人の初恋が実った後、桐原が自分を大事にしてくれたという思いが、その後の人生において由井を勇気づけてくれた、というストーリィ。
初恋の甘酸っぱさと、人生を乗り越えていく勇気を勝ち得たという、女子中学生ストーリィ。
清純で、それでいて力強い美しさに溢れている一篇。

しかし、本作はその一篇に留まりません。それから繋がる4篇によってひとつの連作ストーリィに仕上がっているのですが、そのどの篇をとっても、確かな手応え、速やかに読者を惹きつけて離さない文章力、構成力が感じられて、素晴らしいの一言。

「ドライブスルーに行きたい」:由井の友人だった林ミカが主人公。大学卒業後いろいろあって今はフリーター、そのミカが、中学当時憧れの的であった高山先輩に偶然再会するのですが、現在の2人は今・・・・。
「潮時」:由井の夫である雄一が主人公。乗った航空機の異変に、由井と河子(かこ)に思いを馳せると共に、自分のこれまでを回想します。彼もまた辛い境遇で育った過去あり。
「穴底の部屋」という主婦が主人公。その彼女の浮気相手が高山。恵まれた環境にありますが、幸せな生活を取りこぼしそうになっているという点で、由井らと対照的。
「千波万波」:主人公は由井の娘で中一女子の河子。クラスで除け者になり学校に行きたくなくなり。ママである由井と一緒に青春18キップを使っての旅に出ます。最後に行ったのは九州、由井がお礼を言いたい相手がいるという場所。
そこで由井が再会した相手も、もう一人の主人公。

いやー、どの篇も実に見事でした。読み終えた時の満足感に、唸らされた気分です。
一木けいさんの今後の活躍に期待大!


西国疾走少女/ドライブスルーに行きたい/潮時/穴底の部屋/千波万波

        


   

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