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21.神さまを待っている |
【作家歴】、国道沿いのファミレス、夏のバスプール、海の見える街、南部芸能事務所、メリーランド、運転見合わせ中、ふたつの星とタイムマシン、夏のおわりのハル、春の嵐、みんなの秘密 |
感情8号線、オーディション、罪のあとさき、タイムマシンでは行けない明日、家と庭、コンビ、消えない月、シネマコンプレックス、大人になったら、水槽の中 |
「神さまを待っている」 ★★ | |
2021年10月
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作家デビューするまでアルバイト生活だったという畑野さんの実体験を元にした、貧困女子の過酷な現実をリアルに描き出した長編。 主人公の水越愛は4年制大学を卒業したものの就職できず、派遣社員として働きながら正社員への登用に期待を抱いていた。 しかし、3年という期限を目の前にして派遣切りに遭い、失業手当を受給しながら職を探していたが、ついに見つからず、アパートの家賃ももはや払えずとなって、ホームレスの道を選ぶ。 愛を邪魔者扱いするだけだった父親を頼りにできず、高校以来の友人で現在は公務員である雨宮には頼っちゃいけない、と覚悟してのこと。 漫画喫茶に寝泊まりし、日雇いバイト、漫画喫茶仲間のマユに紹介されて<出会い喫茶>にも。 しかし、決して<ワリキリ>はしないと決めていても、リピーターたちが望むのは所詮セックス。 そんな中で愛は、同じように貧困、ホームレスといった状況に喘ぎつつも何とか生きている、2人の子持ち女性=サチ、やむない事情から家を出た十代の少女=ナギとも出会う。 一旦そんな状態に落ち込んでしまうと、どう足掻いてもそこから抜け出すのは至難のこと、何が良いか悪いかという判断力さえ壊されていく・・・。 金がない、正当に働いて収入を得る道を閉ざされる、居場所を失う、頼れる相手がいない・・・それはどんなに苦しく、恐ろしいことか。 そして、生活保護等の福祉制度があるのに、それに頼ってはいけないと思い込んでいることが、さらに彼女たちを追い詰める。 本作はフィクションですけれど、ノンフィクション並みのリアルさと社会への警鐘を含んでいます。 決して他人事ではない、徐々に広がりつつある現実である、と私は受け留めました。 題名の「神さま」とは、彼女たちを今の窮地から救ってくれる存在のこと。しかし、誰を「神さま」と思うかはその人によってそれぞれ、その事実も余りに切ない・・・。 |
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