福士俊哉
(としや)作品のページ


1959年岩手県盛岡市生、多摩芸術学園映画学科卒。映画の脚本家を経て、早稲田大学古代エジプト調査隊に記録班として参加。以降、エジプト考古省の発掘現場を中心に取材を続け、古代エジプトを題材にした多くのTV番組、展覧会等の演出を担当。2018年初めて執筆した小説「ピラミッドの怪物」にて第25回日本ホラー小説大賞大賞を受賞、同作を改題した「黒いピラミッド」にて作家デビュー


1.黒いピラミッド

2.ツタンカーメンの心臓

  


       

1.

「黒いピラミッド Black Pyramid ★★    日本ホラー小説大賞大賞


黒いピラミッド

2018年10月
角川書店

(1600円+税)

2021年02月
角川ホラー文庫



2021/08/22



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エジプト古代文明の遺跡、ピラミッド、ミイラと続くと、如何にも“呪い”は似つかわしい。
その部分はフィクションとしても、エジプト古代文明の歴史に関わるストーリィとなれば、歴史好きとしては興味津々です。

聖東大学古代エジプト研究室に所属する講師の二宮智生が、遺跡発掘現場の近くで偶然に発見した<アンク>(古代において冥界への鍵とされる)。
それは呪われたアンクだったのか。女子学生、二宮・・・、そして研究室を予想もできない惨劇が襲う

主人公となるのは、聖東大学古代エジプト研究室で二宮と同期の講師、
日下美羽
呪われたアンクをあるべき場所に戻そうと、アンクを携えてエジプトへ向かいます。そして・・・。

エジプト古代文明にまつわるストーリィですから、当然のことながら古代エジプト文明、その遺跡、ミイラ発掘等の知識が多少は必要になります。
その辺りの知識が蘊蓄がましく語られることなく、自然に、必要な最低限に抑えられて語られるので、スムーズに読む進むことができます。
そして最後の章では、実にスリル満点。
映画“インディ・ジョーンズ”“トゥームレイダー”に引けを取らない、映画ばりの展開です。
ただ、犠牲になった人たちについては心傷みます。

二宮智生、美羽と親しい修士生の
橘花音、2人の最後の言葉が印象的、本ストーリィの根幹を明確に告げています。
古代エジプト文明への興味を思い出させられ、想像を超えたサスペンス。読み易くもあり、まずは満足です。


序章.ハムシーン/1.アンク/2.カース/3.ピラミッド・エリア/4.ワディ・グール

     

2.

「ツタンカーメンの心臓 ★★   


ツタンカーメンの心臓

2021年07月
角川書店

(1700円+税)



2021/08/23



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黒いピラミッドの続編。
前作に引き続き
日下美羽が登場、本作では聖東大学の嘱託研究員となった後輩=小栗陽(あきら)と共に活躍します。

京南大学から聖東大学に移籍した
桐生蘭准教授が主導する発掘作業により、新たな墓が発見されます。
その墓の中で見つかった
カノポス(内臓入れ)をスキャン検査するため、カノポスは東京の聖東大学へと移送されます。
そのカノポスが到着した当日の夜から、事件は起こります。
アテン神の復活。さらにツタンカーメン王を復活させようと暗躍する謎の組織。復活させるためには、その心臓を探し出す必要がある、というのが本作表題の所以。

今回もストーリィとしては“インディ・ジョーンズ”張りの展開なのですが、それよりも関心を惹かれたのは、古代エジプト王朝における宗教対立。
昔、世界史の授業において、エジプト王朝で
アメンホテプW世が唯一神“アテン”を唱えたと習いましたが、そのアメンホテプW世こそ、本作でツタンカーメンの父王と説明されるアクエンアテン王
アクエンアテン王が信奉した<アテン神>対古来より神官たちが守り、ツタンカーメン王になって復活した<
アメン神たち>という対立構図。歴史としても実に面白いです。

日下美羽を案内人とする古代エジプト・ミステリ、第3弾がありそうです。楽しみです。

※なお、33百年も前、誰がツタンカーメン王を殺したのか?という問題については、
ボブ・ブライアー「誰がツタンカーメンを殺したかがとても面白い。興味がありましたら是非。

序章.アメリカ人新聞記者/1.聖都アケトアテン/2失われたパピルス/3.三千三百年前の殺人/4.破壊の日

   


  

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