藤本ひとみ・コバルト系作品のページ



C-1.
緋色のルージュではじまった

C-2.愛からはじまるサスペンス

C-3.愛の迷宮でだきしめて!

C-4.ロマンスパン伝説

C-5.月光のピアス

C-6.星影のブレス

C-7.愛をするフォリー


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C-1.

●「緋色のルージュからはじまった」● 

 

1992年
新潮文庫

 

1998/03/14

藤本さんの文庫デビュー5周年の作品の由。巻末では赤川次郎さんが解説をしています。
主人公は藤木ヒトミ24歳、区役所勤め。両親が離婚し、父親側についた弟アキラ21歳が、ロンドンにて自殺。その真相をとくためにヒトミは自らアキラの勤めていた会社に潜り込む、というストーリィ。ヒトミに協力するのが、有名なダイヤモンド商一族の一人、美影樹。彼の指導のもとに短期間でダイヤモンド鑑定の技術を身につけたヒトミは、有給休暇、病気休暇をフルに使ってロンドン、日本と大活躍、ついでに美影樹を恋人にしようと奮闘します。
うーん、それなりに面白く読めたのですが、どちらかと言えば女の子向きの冒険+ラブロマンス。

 

C-2.

●「愛からはじまるサスペンス−まんが家マリナ最初の事件−」● 




1985年07月
コバルト文庫

 

1999/06/06

人気のマリナシリーズ第1作。このシリーズから鑑定医シャルルが誕生しています。
今更読むことはないと思っていたのですが、“藤本ひとみおしゃべりルーム”を設置後、なんとなく読まないわけにいかないムードになった、というのが読んだ動機です。
三流少女マンガ家の池田麻里奈が、出版社の担当編集者から最後通牒を突きつけられ、取材に中学時代の旧友・響谷薫を音楽学校(高校)に訪ねる、というのがストーリィの発端。マリナの一人称でストーリィは語られます。
マリナの反応が多少過剰気味なのは仕方ないとして、ストーリィ進展に躍動感があるのが魅力。それと、作者の余裕が感じられます。まだまだ、いくらでもストーリィを面白く膨らませられる、というような雰囲気があるのが、引き込まれるもうひとつの理由。
この第1作はオーソドックスなミステリ。「シャルルに捧げる夜想曲1」より素直に読めた理由はそこにありそうです。
主要登場人物が、才色兼備というのは、いかにも少女マンガ的ですが、主人公のマリナがぶきっちょで、ありきたりな女の子であるところに、親近感がもてます。うまく読者の多様な興味を勝ち取っているという印象です。
この作品のシリーズ化に読者がのめり込み、人気が沸騰したというのは、私でも充分に理解できます。ただ、読者層のターゲットはやはり女子高校生あたりですよね。(^^;)

 

C-3.

●「愛の迷宮でだきしめて!−まんが家マリナ恋愛事件−」● ★★




1986年04月
コバルト文庫

 

2000/02/06

マリナ・シリーズの第2作。Best5”でダントツの第一位ともなると、やはり読まないわけにはいかない、ということで読んだ作品です。
今回
マリナは、超売れっ子漫画家のいいつけで、パリへダ・ヴヴィンチの秘宝が眠る“緑のゲオルギウスの小部屋”を探しに出かけます。マリナに付き添うことになったのが、中学時代の同級生である和矢・フランソワ・ローランサン。そしてパリで彼らに助力するのが、和矢の親友であるシャルル・ドゥ・アルディと、主要人物が勢ぞろい。
※これでやっと、和矢とシャルルの人物および経歴を知ることができました。(^^;)
ストーリィは、とにかくパリ、フランス中世の歴史、ロワール河の古城めぐりと、ダ・ヴィンチの隠し部屋を探してめまぐるしく展開します。その間に多少の観光案内をも含んでいるのだから、お買い得!
それに誰もが認めるマリナの、傍目を気にせず、打たれ強く、タフで、得な性格と、その条件反射的かつ直情径行ぶりには、呆れるのを通り越して飽きること無し。和矢、シャルルと稀に見る2人の美青年も、一人だけの登場では嫌味となりますが、2人揃っているだけに格さん・助さんの如く、マリナを含めて見事なトリオとなっています。
まあ、1冊でこれだけ引っ張りまわされたうえ、和矢・シャルルという美青年を目の前にぶら下げられると、その後もこのシリーズをむさぼるように読まずにはいられない、という気持ちがよく理解できます。
(さて、私はどうしようか...)

 

C-4.

●「ロマンスパン伝説−花織高校恋愛スキャンダル−」● 




1986年01月
コバルト文庫

 

2000/02/20

嗚呼、なんという見当違いの本に手を出してしまったのか、というのが第一の思い。その所為か、冒頭からなかなか読み進まず、最後はエイヤッとばかりに読み切った、というのが正直なところです。
主人公・
菜崎真美子の通う花織高校には、ロマンスパンを食べると片想いが両想いになれるという伝説があった。フランスパンに切れ目を2つ入れ、片方にジャムとバター、もう一方に小倉アンとバターが塗ってあるという代物。
チビで太めの主人公がそれを食べた途端、突然校内きっての2人の超人気男子生徒・
芹沢一樹高柳真人にモテ始めるという急展開。
とにかく、なにかというと
「うわ〜ん」等の嬌声で始まるところが、ついていけない。年代差は想像力で補えるものの、これだけは私が高校時代に本作品を読んだとしても、おそらくついていけるものではなかったでしょう。
面白かったのは、
“四季シスターズ” (下記)という主人公の友人たち。それぞれ個性あり、誇張的ではあるものの如何にもアチコチにいそうなところが 楽しかったです。

・春子:早熟、男漁りが大好き、すごい移り気、台風並のヒステリー
夏枝:体育部副部長、女離れした腕力の持ち主
秋代:大食漢、真美・夏枝・冬美の弁当3人分を横取りしても平然
冬美:流言、飛語、噂、デマ、すべてにわたる情報通。マスコミ志望

 

C-5.

●「月光のピアス−ユメミと銀のバラ騎士団−」● ★☆




1989年07月
コバルト文庫

第16刷
1994年03月
(457円+税)

 

2000/03/27

速いテンポでストーリィが進むので、読み手側としては飽きる暇がない、 というのが第一印象。
でも、主人公・夢美の耳に食い込んでしまった月光のピアスの呪いから、高天宏、光坂亜輝、冷泉寺貴緒の3人が狼、猫、鷹に変身してしまうなんていうのはなぁ〜。まるで、鈴影聖樹というインストラクターに引率された、“コバルト版三蔵法師一行”という気がしてしまいます。
それにしても、夢見のキャラクターは、なかなかに楽しいです。高校生主婦という設定は、現実対応力があって逞しいという夢見の性格に説得力を与えるものでしょうけれど、マリナより私の好みに合う気がします。
主人公の女の子だけ普通の人で、その周囲の男がみんな格好イイ美男子ばかりというのは、いつもの典型的パターン。高天宏は、普通にカッコイイ男の子。光坂亜輝は、いつも出てきそうな保護してあげたい男の子。一方、鈴風聖樹は絵に描いたようで現実感に欠けるし、冷泉寺貴緒となるとまるでイメージが湧かないなぁ。
本書で、コバルトは4冊目なのですけれど、いずれもテンポが軽快で、ついストーリィ展開に引きずり込まれてしまいます。しかし、その分どうしても登場人物たちの設定は類型的なものになりがち。本書の5人にしてもそうです。
小説を書く側の醍醐味は、書き進む内に作家自身も予期しなかったような変貌を登場人物たちが遂げていく、登場人物たちが勝手にストーリィを作り出していく、ということにあると思うのです。そういった要素は、上記コバルトのパターンでは起きにくいのではないでしょうか。そう考えると、藤本さんがコバルト作品を再び書き継ぐというのは、もはや考えられないことのように思えます。
藤本コバルト・ファンには、怒られそうな感想になってしまいましたが、結構面白かったです。

 

C-6.

●「星影のブレス−ユメミと銀のバラ騎士団−」● 




1989年10月
コバルト文庫

2000/04/02

主人公・夢美と4人の仲間が、失われた七つの聖宝(三宇宙の聖宝+四精霊の聖宝)を探すシリーズ2作目。
夢美がドキッとする時に3人が変身するシーンも、こう度々となってくるとコミカルな印象を拭えません。思わず失笑してしまうのが常。
馬琴「南総里見八犬伝」に似てきたなあ、と感じるのはファンに失礼でしょうか。
そんな中で、第2作の緊迫感を一人で盛り上げているのが、新たに登場したバラ騎士の一人、
火狩(かがり)遼
緊迫感どころか、この第2作は火狩に始まり、火狩に終わる、と言ったストーリィです。変身3人組は完全に脇役に回った、という印象。
高天宏がとかく 失笑を誘う脇役に徹しせしめられているのが、可哀相になるくらいです。
“マリナ”シリーズが推理サスペンスを基調にしているのに対し、本シリーズは、 ファンタジー活劇が基調と言って良いでしょう。

 

C-7.

●「愛をするフォリー−まんが家マリナ アンテロス事件−」● 




1991年03月
コバルト文庫

2000/08/04

マリナ・シリーズの第12作。
2作目を読んだきり、一気にここまで跳んでしまいました。
和矢を殺そうとしたアンテロスを倒し、仮面をとってみると、なんとそれはシャルルだった。 そこから始まるストーリィ。
本当にアンテロスはシャルルだったのか、何故シャルルが和矢を殺そうとしたのか、シャルルを信じるべきなのか。
和矢マリナは、それらの疑問に逡巡します。そして2人は、謎解きサスペンスの中へ入り込んでいく、というのが本巻のストーリィ。
和矢、シャルルは、なんとなく成長の跡が感じられるのですが、主人公のマリナは相も変わらず。和矢とシャルルが、マリナを巡って争うなんて、あまり納得感がありません。本巻におえけるマリナは主人公ではなく、単なる和矢、シャルルの引立て役に過ぎないように思えます。
謎解きの方は、なかなか工夫を凝らしたもの。しかし、マリナたちの反攻は、結局次作に委ねられています。
こうしてマリナ・シリーズは何時までも続いていくのだなあ、と実感。

 

藤本ひとみ作品のページ No.1

 


  

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