「ふしぎの国の安兵衛」 ★☆ |
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2012年12月
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江戸時代の武士がひょっこり現代社会に現れたというタイムスリップ・ストーリィ。 侍が現代社会にやってきた話となれば思い出すのは原田康子「満月」。でも本書は原田作品とは異なる、軽妙なユーモア感溢れるホームドラマ的ストーリィです。 街中で途方に暮れた様子をしている奇妙な恰好の男を拾うこととなったのは、離婚してシングルマザーとなった遊佐ひろ子と友也の母子。 ※なお、子育てについ手抜きしている現代の父親(私を含む)、母親にはちょっと耳の痛い部分もあります。 |
2. | |
「人質オペラ」 ★★ |
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シリアで日本人2人がイスラム過激派組織IHOに人質にされ、身代金の要求が行われる。 その時、日本政府はどう対応するのか、という極めてリアルなストーリィ。 本作は、人質をどうしたら救えるか、というようなアクション活劇風のストーリィにはなりません。 矢面に立つことになった政府、具体的には内閣総理大臣を支える官房長官の安井聡美にあっては、現政権に対する国民の支持を失わないためには、どう事件を抑え込めばいいか、対応状況につき批判を受けないためにはどう姿勢を取り繕えばいいかが全て。 そこでは人質の生命保護、救出など二の次に過ぎません。 国際的な大事件の舞台裏で繰り広げられる、(不謹慎とは思いますが)何やら滑稽なドタバタ劇を見させられた気分です。 一人目の人質は、NGO活動をしていた若い女性。それだけならこの政権は体裁さえ取り繕えれば簡単に見殺しにしたのでしょうけれど、二人目の人質が現職外務大臣の長男だったことから問題は一気に拡張、いろいろな問題を引き起こすことになります。 政治家とは、票のため以外には動かないもの・・・何やら真実を言い当てているドラマを見ているようで、滑稽でもあり、情けなくもあり。 それにしても、平谷総理を始め、登場する男性たちが概ね単純、お調子者のきらいがあるのに対し、安井官房長官を始めとする女性たちの何と冷静沈着だったり、強かだったり、横暴だったりすることか。 ある意味で、これはひとつの群像劇だった、と感じます。 1.人質/2.二人目/3.転進/4.混乱/5.噴出/6.戦場/7.桜の木の下で |