青木祐子作品のページ


1969年生、長野県出身。「ぼくのズーマー」にて2002年度ノベル大賞を受賞。「これは経費で落ちません!」シリーズが人気。


1.これは経費で落ちません!

2.レンタルフレンド

 


                   

1.

「これは経費で落ちません!−経理部の森若さん− 
 We cannot pay you for this!−Ms.Moriwaka of Accounting Department−


これは経費で落ちません!

2016年05月
集英社刊

オレンジ文庫
(550円+税)



2017/08/19



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石鹸や化粧品のメーカーである「天天コーポレーション」の経理部に所属する森若沙名子を主人公とし、会社を舞台にした、ささやかな連作日常ミステリ。
経理部からは社内の様々な人間模様が見えてくる?というのがコンセプトか。

表題に引かれて購入、読んでみたのですが、率直に言って今ひとつ、という印象。
登場人物、ストーリィとも、なんかインパクトを欠くよなぁ、という感想です。もっとも会社の若い経理部社員が見聞きする事々ですから、大事件ばかりでは困ってしまいます。そうした面では穏当と言うべきなのかもしれません。

森若沙名子、27歳。一応美人に分類されるものの、彼氏歴なし。仕事はきちんとこなし、経理部長の信頼も厚いのですがが、何故か、社内で“怖い”という評判。
社内や同僚との飲み食いには原則参加せず、レンタルビデオ店で借りた映画のDVD鑑賞が楽しみというのが、主人公のキャラクター。
それでも、経理部後輩の
佐々木真夕や、その同期で営業部所属の中島希梨香、そして森若の同期で入浴剤開発室の研究員である鏡美月と、森若さんの周囲は中々賑やかです。
そのうえ、営業部で現在「エース」と言われている4年目社員の山田太陽がやたら森若さんに関心を持っている、という具合。

森若沙名子という、地味ですが堅実な女性社員を巡る青春風ストーリィという面では、興味引かれるところもあるのですが。

※「これは経費で落ちません!」は既に文庫本2冊目が刊行されていますが、本書より前に刊行されている
「風呂ソムリエ」という作品、その登場人物は天天コーポレーション入浴剤開発室の鏡美月、研究所の受付係である砂川ゆいみ。
天天コーポレーションのストーリィはそこから始まっているようです。


1.これは経費で落ちません!/2.ミスしたら謝れ! いや謝ってくださいね?/3.あなたはぼくの太陽です!/4.今送ったメール間違いだから。見ずに消せ!/エピローグ〜代理の真夕ちゃん〜

               

2.
「レンタルフレンド Rental Friend ★★


レンタルフレンド

2021年05月
集英社

(1600円+税)



2021/07/07



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今流行りらしい“レンタルフレンド”の話かァと興味を惹かれ、読んでみました。
それで結果はというと、予想以上に面白かった。

レンタルフレンドの是非については、そういう必要性があるのなら、良いのではないか、というのが私の考えです。
元々金銭で時間や労力を節約できるのなら利用したい、と思う方なので、あまり抵抗感は覚えません。
むしろ、レンタルフレンドを頼まざるを得ない状況を作り出している社会の仕組み、これこそどうにかならないか、と思うことの方が多いです。

主人公はバイトで“レンタルフレンド”をし始め、今は大手商社のエリア職を退職しフリーで依頼に応じている
星野七実・26歳
一口にレンタルフレンドといっても、依頼の事情は様々です。

「バニラクッキーは砕けない」:デザートブッフェに同行して欲しいという女子大生からの依頼。さて依頼人の動機は・・・。
「赤い花に幻の水」:有名ヘアメイクアーティストから新作舞台の観劇へ同行依頼。依頼人の目的は・・・。
「臆病な猫を抱く」:46歳の独身翻訳家から、入院中飼い猫の世話をして欲しいとの依頼。家族とずっと絶縁状態というその理由は・・・。
「仁義なき女子の歌」婚約者の大学ゼミ仲間の集まりへの同行依頼。しかし、婚約者だという相手男性は・・・。

依頼人が打ち明けていなかった目的、隠されていたレンタルフレンド依頼の理由が、徐々に明らかになっていくところが面白い。
とくに最後の章、まるでミステリ、そしてまたサスペンスの味わいもたっぷり。

読後感は、痛快、爽快、そして気分スッキリです。お薦め。

※まず題名から連想したのは
佐藤亜有子「ボディ・レンタル
でも鮮烈だった同作と比較すると、本作は穏当な内容でした。


1.バニラクッキーは砕けない/2.赤い花に幻の水/3.臆病な猫を抱く/4.仁義なき女子の歌

        


   

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