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3.おい!山田(文庫改題:大翔製菓広報宣伝部 おい!山田) 4.退職クロスロード |
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●「被取締役新入社員(とりしまられやく)」● ★ ドラマ原作大賞 |
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2013年04月
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「被取締役」と書いて「とりしまられやく」と読むらしい。 主人公の鈴木信男は小学生の頃から何をやっても駄目、働きに出ても何一つ満足にできず、唯一続けられる仕事は段ボール箱の組立だけという、これ以上ないというくらいの駄目な男なのです、彼は。 そんな一人ダメ男がいるお陰で、部内のチームワークは何故か良くなり、皆の志気が上がって業績もうなぎ登り。社長と人事担当役員の奇策が成功したと喜んだのも束の間、事態は思わぬ方向へと転がっていきます。 ※ふとフィンダー「侵入社員」を思い出しました。片やサスペンス、片や本書は心温まるユーモア小説という違いがありますが、私としては「侵入社員」の方が歯応えがあって、面白かったように思います。 |
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「1000ヘクトパスカルの主人公」 ★★ |
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空を眺めるのは好きです、昔から。 本ストーリィの主人公、そして彼に大きなきっかけを与えてくれた女の子も、空を眺めるのが大好きという大学生。 人から言われるまま漫然と生きてきた城山義元。空をぼぉっと眺めていた義元に話しかけてきたのは、羽村友恵。 空が好きで高一の時には早や気象予報士の資格を取り、将来は気象庁に入るのが夢だと語る友恵。それに対し義元はというと、サークルの仲間らが年中アパートにたむろし、のんべんだらりと過ごしている、何の目標も持たない男子学生。 そんな義元が、友恵との出会いをきっかけにして、とりあえず何かに一生懸命取り組み、また歌唄いの老婆マリーや赤ん坊を抱える主婦の静と知り合うことによって、少しずつ変わっていくという青春小説です。 ただ、義元の身に決定的な変化をもたらすのは就活戦線であるというところが現代的。誰しも疑問を持たざるを得ない現代の就活ですけれど、そこに疑問を感じて別の道を選び取ることを決心するに至るのは、義元が素直な青年だからこそと思います。 読み終わってみれば、義元と友恵、自堕落に見えた義元とサークル仲間、マリーや静らとの関わりが、それぞれ愛おしく胸に残ります。どれもこれも無駄なものは少しもなかった、という述懐がとても気持ち良い青春ストーリィ。 また、歌唄いのマリーとその娘の、対立と和解を描いた部分も魅力に富んでいます。 人それぞれどんな道を選ぼうと、夢や希望をもって進んでいけば、いつか大切なものを手に入れることが出来るのかもしれない。読了後の余韻はとても爽やかです。 ※1000ヘクトパスカルとは、言うなれば地表から上空8万メートルまで積み重なった空気の重さ、つまり“空の重さ”だと言う。 ※作者は異なりますが、羽村友恵、あさのあつこ「えりなの青い空」のえりなが成長するとこんな女の子になるのでは。 |
| 3. | |
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「おい!山田」 ★★ |
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2015年02月
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世間はすっかり“ゆるキャラ”ブームですが、ゆるキャラブームに乗り遅れすっかり焦った経営陣から、「金出さず、人出さず、成果出せ」と言われた広報宣伝部長の琴平、窮余の一策として考え付いたのが、一社員をゆるキャラにすること。 そのゆるキャラ社員に指名されたのが、山田さん、29歳。大阪の物流部から広報宣伝部に異動させられ、さっそく「ゆるキャラ、山田です」となりますが、さてその成果は・・・・。 ユニークなお仕事小説という印象ですが、あにはからんや、結構まっすぐなストーリィ。 原型は源氏鶏太のサラリーマン小説にあるのではないかなぁと思います。保守的で自分の立ち場ばかり気にする役員・部長陣に対して、若手社員らが一気団結して会社の為に邁進する、というストーリィです、要は。 単純に主人公=山田助(たすく)、という訳ではありません。 その時々でゆるキャラ“山田”のプロデュースを命じられた水嶋里美だったり、山田本人であったり、またまた他の人物であったりと、第一人称で語る主人公役は随時変わります。おっと、今の主人公は誰?と戸惑うところもありますが、それもまた面白味かも。 源氏鶏太「青年の椅子」辺りと比較すると、当時は女性社員が主人公を支えるという立場でしたけれど、そこは現代らしく女性社員も山田さんと一緒に戦う“戦友”という立場にグレードアップしています。 四の五の言う前にまず行動、最大の敵は会社に巣食うセクショナリズム、という本書中の言葉は、あらゆる会社に共通する真理でしょう。もちろん、私の職場でも常日頃感じる問題です。 会社の為に真面目に働く一般社員たちの姿を捉えたサラリーマンン小説、面白く、楽しく読めること請け合いです。 1.ゆるキャラ山田、はじめました/2.フルスイング/3.ぼくたちにできること/4.ビジネスライク、ひゅーまんらいく/5.倒せ、永遠の敵を/6.絵に描いた餅に思いは宿る/7.戦友/8.ぼくらは社畜ではない/9.ゆるキャラ山田、再び/10.ハッピーバレンタインデー?/11.ブラックホワイトデー |
| 4. | |
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「退職クロスロード」 ★★ |
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総合メーカー、万屋カンザキ本社ビル、その年度末 3月31日。 その役員・社員たちの慌ただしい一日を描く群像劇。 年度末となれば人事異動等で忙しい時期。 清掃会社の契約社員である守田守(44歳)は、白髪のおっさん社員から突然、朝食の誘いを受けます。 休憩時間となる 9時、守田はその佐和山義男に誘われて近所のラーメン屋に。そこで佐和山から、今日定年退職すること、5年前の今日、守田に命を救われたとお礼を言われます。 信頼していた部下から裏切られて降格人事、屋上で自殺しようとしていたのだという。 5年前、一体何があったのか。そして、佐和山がわざわざ守田に声を掛けてきた目的は何なのか? 清掃員である守田を皮切りに、今も佐和山を慕う元部下、佐和山の同期である女性役員、育児休暇を二度取得した為報復人事をされたその夫、偶然騒動に関わることになったおチャラけ社員、そして賭けに勝ったと喜ぶ役員、を各章の主人公として連作形式で語られるハラハラ、ドキドキの痛快な逆転ストーリー。 いやはや私もかつて会社員でしたが、自らの保身あるいは昇進に固執する会社員ほど、傍から見て醜いものはありません。 さて、その日の最後、どういう結末を迎えるのか。そして、清掃員である守田にどう関わるのか。どうぞお楽しみに。 なお、本作を読み終えた時、仕事に対する考え方、見える景色が少しは変わっているかもしれません。 プロローグ/1.早朝の清掃員/2.傍観者の朝/3.女史の昼休み/4.主夫の午後三時/5.コスパ社員と人情社員の夕暮れ/6.勝者の五時半/エピローグ |