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1.パラ・スター<Side 百花> 2.パラ・スター<Side 宝良> |
「パラ・スター<Side 百花(ももか)>」 ★★ | |
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「たーちゃんは最強の車いすテニス選手になって。わたしはたーちゃんのために最高の車いすを作るから」 高校2年時、親友の君島宝良が車にはねられて脊椎損傷、下半身不随となり宝良は車いすユーザーに。 立場は違えど、その事故によってそれぞれ苦境に立たされた2人を救ったのは<車いすテニス>との出会い。 元々有望なテニス選手だった宝良は、再び闘う場を見つけ車いすテニスの世界へ。一方、本書主人公である山路百花は、ひと目見た時から競技用車いすに魅せられ、メーカーである藤沢製作所に入社。 本巻は、山路百花の側、「その人を自由にする車いす」となる競技用車いすの製作をめざし、ひたすらに情熱を燃やす若い女性エンジニアの姿を描く青春&成長ストーリィ。 百花と宝良、対照的な性格の親友関係にも惹かれますが、百花とその指導係となった小田切夏樹のやりとりは有川ひろ「図書館戦争」の笠原郁と堂上篤のコンビを彷彿させられて楽しい。 でも何よりも興奮させられるのは、競技用車いす製作に向けた熱い想い、そして車いすテニス試合のデッドヒート場面。 確かに障害を背負い、車いすユーザーとなったことによるハンデを抱えたのは事実ですが、だからといって自分の人生を選び取る自由まで奪い取られたわけではない、と勇気づける熱いメッセージを受け取った思いがします。 |
「パラ・スター<Side 宝良(たから)>」 ★★☆ | |
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物語の後半。「<Side 百花>」から1年後が描かれます。 本巻は山路百花の親友、車いすテニス選手である君島宝良を主人公にしたスポーツ・青春ストーリィ。 新鋭の車いすテニス選手として注目を集めた宝良でしたが、このところ壁に突き当たったかのように不調、芳しい成績が残せない状況。 そうした中、ジュニア時代からのコーチだった雪代が闘病することになり、コーチの変更。そして新コーチとなった志摩の勧めでテニス競技用車いすの新調を検討することとなり、藤沢製作所を訪ねることになります。 車いす選手だからといって、スポーツ競技小説によくある躍進・挫折・より高みを目指しての再挑戦、というパターンは変わりません。 勇気を出してコーチおよび車いすの変更を選んだ宝良、果たして再び躍進することができるのか。 また、前作の最後に登場した小学生の女の子=佐山みちるも再登場、車いすユーザーとなった少女の胸の内も語られます。 迫真の試合描写が本巻の魅力。とくに終盤、女子車いすテニス選手の世界トッププレイヤーである七條玲との激闘は圧巻!と言うに尽きます。 読了して感じたのは、宝良の闘いは単に試合に勝つ、ということではない、ということ。 試合で闘うと同時に、障がい者=車いすユーザーになったからといって人であることに何ら変わりはないということ、そしてそのことを広く世の中に訴える闘い、なのでしょう。 その意味で、七條玲や最上涼子ら同じ車いすテニス選手らは、ライバルであると同時にその同志なのでしょう。 読者の眼前に新しい世界を広げてくれる青春小説、2巻合わせてお薦めです。 |