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「地上で僕らはつかの間きらめく」 ★★☆ 原題:"On Earth We're Briefly Gorgeous" 訳:木原善彦 |
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2021年08月
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母国を出てアメリカに渡ったベトナム人一家、3代(祖母・母・息子)の苦難もあった歳月を綴った、静かなる叙事詩という印象の長編。 祖母のラン(百合)にはベトナム戦争下、米兵相手に売春を行って生き抜いてきたという過去があり、結婚した元米兵のポールおじいちゃんは母の実父ではない。 その母親のホン(薔薇)は、英語ができないまま、ネイリストとして働いている。 家族から「リトル・ドッグ」と呼ばれる主人公は、煙草農場で働いて時に年上の少年との同性愛を経験する。 さもどろどろしたストーリィになるかと思われるところですが、本ストーリィはそれらを浄化し、むしろ美しいリズムをもつ長編小説として成り立っています。 ストーリィは、主人公の子供時代、青春時代(恋愛経験)、成人後という三部構成。 アメリカに渡りながらもベトナム人としてしなやかに生き抜いた祖母・母の姿と、性的マイノリティであることを自覚しながら生きていこうとする主人公の姿が、心に残ります。 |