2003年発表
2006年06月
新潮社刊
(1900円+税)
2006/08/30
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6月新潮社から英国ものファンタジー冒険物語が2作品同時に刊行され、それなりに期待したのですが、結局がっかり。
率直に言って、「エンデュミオン・スプリング」に引き続き本書もつまらなかった。
暗黒の神ピラテオンを信奉する悪徳牧師デマラルは、<ケルヴィム>を手に入れその魔法の力で全世界を支配しようとしている。
少年トマスと幼馴染である少女ケイトは、アフリカからケルヴィルを取り戻すためにやってきたラファーと協力し、デマラルの野望を阻止しようとする、というストーリィ。
「エンデュミオン」もそうだったのですが、何故?と思うくらい主人公に魅力が無い。とくに本書は、主人公は一体誰なのか?と思う程。トマスとケイトは主人公にすらなり得ていないのです。
結局本書は、「失楽園」での神とサタンとの戦いの延長戦、イングランド北部の海岸地帯という地域限定型、かつ悪徳牧師と少年たちを駒にした神(リアタムス)とサタン(ピラテオン)の代理戦争といった様相なのです。
作者のテイラーは様々な生活・仕事を転々とした後に牧師となった人物。本書はその彼が地元の子供たちを喜ばせようと書き、後に自費出版した作品とのことです。その所為か、所々説教臭く、ラファー弁じるところの神への信頼はわざとらしくさえ聞こえます。そのうえいろいろな人物が脈略無く登場し、ストーリィは場当たり的に続けられているという印象を禁じ得ない。
キリスト教における神と悪魔の抗争を子供たちに面白く聞かせようとしたための物語、というのなら判らぬでもありませんけど。
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