|
|
●「英国メイド マーガレットの回想」● ★★☆ |
|
2011年12月
|
貧困家庭に生まれ、当然のごとく進学できず、15歳の時に住み込みキッチンメイドとなり、幾つもの裕福な家庭での働きを経てコックも務めた英国女性マーガレットの自伝。 とにかく面白いです。生き生きとした語り口、そしてユーモア精神も縦横に振りまくという風。 そのうえ、自分を始め家事使用人側、雇い主側の双方を客観的、かつ批評精神をもって語っているところが本作品の得難い魅力です。 これまで近代小説は数多く読んできましたが、殆どは雇い主となるような上流階級の人々が主な登場人物で、使用人は無表情に登場してくるというパターン。何故かといえば、そうした使用人階層から出てきた作家がまずいない、というに尽きるでしょう。 その点、本作者のマーガレット・パウエルという存在は画期的と言って間違いない。。 元々彼女、学校好き、読書好きで、ディケンズ等をかなり愛読していた様子、ということも大きいのでしょう。 ある家に奉公していた時、その家の図書室の本を読んでよいかと雇い主に聞いたところ、家事使用人が本を読むのか?とびっくりしたというエピソードが可笑しい。雇い主が使用人たちをどう見ていたか、のひとつの象徴例でしょう。 当時の労働者階級、そして家事使用人の暮しや生態を知ることができると共に、向上心に溢れていて意外に大胆なところもあるマーガレットの足跡も楽しめるという楽しみ2本立て、おまけに読めば読む程味わいが滲み出てくるという興味尽きない一冊。お薦めです! 1.海辺の町の少女時代/2.初めてのメイド勤め/3.大都会のキッチンメイド/4.コックの遍歴/5.新しい生活、新しい時代、そして野望 |