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●「ビューティフル・ボーイ」●
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2001/07/05 |
テレビ番組プロデューサーのハリー・シルバーは、ただ一度の浮気がばれて、妻のジーナに出て行かれてしまいます。更に突然仕事も首になってしまうという、まさに踏んだり蹴ったり、30歳にて不幸を一人で抱え込んでしまったような状況。 ジーナの父親の元に残された4歳の一人息子パットを取り戻したのはいいけれど、ハリーは失業者兼シングル・ファザーの重荷を背負う結果となります。 突然妻に去られた夫がシングル・ファザーとして奮闘、家族愛に目覚めるといったストーリィーは、度々繰り返される定番ストーリィのようです。思い出すのは、ダスティン・ホフマンが主演して評判になった映画「クレイマー・クレイマー」。 本作品の特徴は、単にシングル・ファザーとしての奮闘記に留まらず、ロマンテイックな夢ばかり追っていたハリーという主人公が、子育てに奮闘しながら、初めて自立した人間に成長していくストーリィにある、と言えるでしょう。 彼は息子パットに対しても、新しい恋人シドに対しても、常に自信なげな様子です。その度にハリーが思い浮かべるのは、自信にみちて常に頼もしかった自分の父親の姿。自分と父親、自分とパットの関係を繰り返し比較しながら、息子にとって、自分にとって一番大切なものは何なのか、とハリーは考えるに至ります。 英米では広く共感を呼びそうなストーリィですが、日本では未だそこまで至っていないでしょう。したがって、感動もイギリス程には至りません。 でも、ハリーが自分の父親を改めて見つめ直すストーリィには、新鮮さがあります。後味は極めて爽やかです。 ※重松清「幼な子われらに生まれ」と読み比べることをお薦めします。 |