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「友だち」 ★★ 全米図書賞 |
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2020年01月
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かつては憧れの師であり、長い年月にわたり親密な友人であった先輩作家が自殺。 主人公である初老の老人作家は喪失感を抱え、彼に語り掛け、また彼の言葉を思い返します。 そんな彼女に思いがけないことが起こります。 それは、彼が飼っていた大型グレートデンである老犬アポロの引き取りを頼まれたこと。 ペット禁止マンションであるにもかかわらず、どういう算段があったのか、彼女はアポロを自分の部屋に引き取ります。 主人公とアポロは、共に喪失感を抱く同朋と言って良い。そしてアポロが物言わぬ犬であるからこそ、主人公の思索はさらに膨らむ、という印象です。 ストーリィというようなストーリィはなく、本作はかなり思索的な作品。 主人公が様々に思うことを、とめどなく書き綴っていく、という風。そしてそこは、2人が共に作家であったためか、有名作家のあれこれについても語られます。 ふとギッシング「ヘンリ・ライクロフトの私記」を思い出させられるところあり。 そうした、それだけの作品と思って読んでいた処、ガツンとやられたのが終盤。 本作がフィクションに他ならないことが、主人公からある人物に対して語られます。 主人公とアポロの同居人ぶりも何となく面白いのですが、それを超えて面白い処。是非、お楽しみに。 |