正直言って、こうした作品の感想を書くのは苦手です。こう感動した、感動したと書かれると、つい抵抗したくなってしまう。
主人公の一人が最後に若くして死すというストーリィは、涙を誘われずには済まないもので、それだけで感動的な作品になってしまうものです。私の学生時代にはシーガル「ラブ・ストーリィ(ある愛の詩)」がありましたし、最近でもスパークス「奇跡を信じて」があります。それらと比べて本作品の方が優っているのかというと、決してそんなことはありません。でも、比較すると、それらと違った本作品の特徴がはっきり見えてきます。
主人公は、大会社の社長に登りつめたジョン・ハーディング。愛する妻と息子があり、故郷に戻って邸宅を構え、町の人々から大歓迎を受ける。成功物語の頂点にある人物です。そのハーディングが一転して自殺しようとしたのは、愛する妻子を突然の交通事故で失った所為。あと一歩のところでそれを止めたのは、かつての親友ビルの訪問、そしてビルが依頼してきたリトルリーグ(少年野球)の監督仕事です。
そのチーム・エンジェルスには、ただ一人、打つことも守ることもヘタクソな小柄な少年、ティモシー・ノーブルがいます。それでも、彼のモットーは「毎日、毎日、あらゆる面で、僕はどんどん良くなっている!」「絶対、絶対、絶対、あきらめるな!」
そんなティモシーの姿に、ハーディングは生きる勇気を再び見いだし、またチーム・メイトもどれだけ励まされたことか。
リトルリーグを舞台に、人生哲学を率直に謳った素敵な物語、爽やかな読後感があります。それが本書の特徴です。
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