2001年03月
新潮社刊
(2100円+税)
2006年07月
新潮文庫化
2001/06/14
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微に入り細に入る美食話でとことん読者を幻惑し尽くす、そして作中、密かにミステリを忍ばせている、という作品です。
冒頭から、西欧各国におよぶ多彩な美食の話ばかり。果たして本書は美食論なのか、エッセイなのか、小説なのか、どう受け止めてよいのか困惑するばかりです。それに付け加え、文章はやたら長く、途中に解説の如きものが混じり、文章の意味さえ捉えかねる難解さ。正直言って、読み進むには相当な努力と根気が必要です。
その中でふと気付く事は、美食話はカモフラージュではないか、その合い間に本当のストーリィを進展させているのではないか、ということ。当たらずとも遠からず、です。
ストーリィが漸く姿を明らかにしてくるのは、最後の最後に至ってから。そこに至って、やっとそれまでの美食話にも題名にも、ちゃんと意味のあることが理解できるのです。
この作品を楽しめるかどうかは、作品全般にわたる数々の美味メニューをどれだけ思い浮かべ、楽しむことができるかによるでしょう。日本人にはちょっと辛い感じです。
冬…冬のメニュー、もうひとつの冬のメニュー
春…子羊のロースト、カレーを主題とした午餐
夏…総説、食前酒、野菜とサラダ、冷肉盛り合わせ
秋…アイヨリ、朝食、バーベキュー、オムレツ
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