ウィリアム・ケント・クルーガー作品のページ


William Kent Krueger  米国オレゴン州育ち。様々な職を経て、1998年「凍りつく心臓」にて作家デビュー。2013年「ありふれた祈り」にてアメリカ探偵作家クラブ賞を受賞。

 


                

「ありふれた祈り」 ★★☆
 
原題:"Ordinary Grace"    訳:宇佐川晶子


ありふれた祈り画像

2013年発表

2014年12月
早川書房刊

ポケット・ミステリ
(1800円+税)

 

2015/02/03

 

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1961年の夏、米国ミネソタ州の田舎町でひとりの少年が列車にはねられて死んだ事故のことからストーリィは語り起されます。
S・キング「スタンド・バイ・ミーを連想させるような出だしですが、それは生涯忘れることのできなくなったひと夏の序章にしか過ぎません。
一人称の主人公は、少年の
フランク。牧師である父親ネイサン、芸術家肌の母親ルース、音楽の才能に恵まれた姉アリエル、吃音症の弟ジェイクという5人家族。
平凡だけれどそれなりに幸せだった家族に、思いも寄らない悲劇が起こります。そして悲劇はそれにとどまらず・・・・。

一応ミステリに分類される作品でしょうけれど、本質的には家族の物語であり、かつ喪失と赦しの物語と言うべきでしょう。

どちらかというと聡明な弟ジェイクに比較して、フランクはかなり無茶な行動をする少年。その分、短絡的に怒りを爆発させ、思い込みも激しい。
人を信じるという姿勢を揺るがすことない父親ネイサン、衝動的なフランク、大人びた処のあるジェイクという3人が対照的。そこから鮮明になるのは、怒りの感情はさらなる悲劇を生みかねないという事実です。
悲劇を前にした人間が行うべきことは、怒りを爆発させることではなく、ただ祈ることかもしれません。

エピローグでの親子3人の姿に、初めて深い感慨を覚えます。

          


      

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