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「ある犬の飼い主の一日」 ★★ リブリス文学賞 |
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主人公のヘンク・ファン・ドールンは56歳、集中治療室(ICU) の看護師。離婚し、今は愛犬スクルフとの暮らし。 題名の「ある犬の飼い主」とは、このヘンクのこと。 そのヘンクの、とある一日を描いたストーリィです。 描かれるのは、穏やかな一日の姿です。 ヘンクがこの日に出会い、惹かれた同年配の女性=ミアが、愛犬スクルフを心配する様子から推察して言うように、ヘンクは優しくて温かな男性。 この一日の穏やかさ、安らかさは、こうしたヘンクの人間性からもたらされていると言って間違いありません。 17歳の姪=ローザともまるで親友同士のような仲の良さ、離婚した元妻のリディアとも憎み合っている様子はない、そしてスクルフに示す愛情、そして自分に正直なヘンクには、親しみ、そして愛おしさを感じるばかりです。 だからこそ、読了したときには、安息を感じます。 安らぎと安息、それはヘンクが得たものというより、本書を通じて読者が手にしたもの、というべきでしょう。 軽快にして明快、そして気持ちの良いストーリィ。 私たちも、自分たちの一日を丁寧に見直してみれば、一日の中に実に多くのものが収まっているのかもしれません。 ※なお、スクルフの犬種は<コーイケルホンディエ>。その性格は陽気でフレンドリー、飼い主と一緒に遊ぶことが大好きな犬だそうです。ヘンクがスクルフを大事にする気持ち、少し分かるような気がします。 |