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「四人の交差点」 ★★☆ |
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舞台はフィンランド、1895年から百年、3代に亘る家族の物語。 ただし、家族の物語と一口に言ってもよくあるような世代順に語っていくという方式ではなく、重なる時期を主要登場人物4人それぞれの視点から描いているところが巧み。それによって、この一家の姿が立体的に浮かび上がってきます。 また、ひとつの長い流れとして描くのではなく、ピンポイントで設定した時における出来事を描くというスタイルが、その間の流れを読み手に想像させて予想外の面白さです。 マリアは若い助産師として、フィンランド北部オウル市に近い村にやってくる。村人たちの冷たい視線に負けず、果敢な行動で助産師としての信頼を勝ち得、そして未婚で娘のラハヤを産み、家を作って育てます。 娘のラハヤはマリアと同じように写真技師の職を身に付け、未婚でアンナという娘を産む。しかし、その後はオンニという心優しい男性と結婚し3人の子をもうけるという点では、マリアとは対照的。 カーリナは、ラハヤの末子ヨハンネスの妻で、ラハヤと同居。しかし、ヨハンネスとカーリナ、孫たちも小言の多いラハヤと対立するかのようで、ラハヤの孤独感が目立ちます。 また、本物語の冒頭から、ラハヤとオンニの間には何らか深い亀裂があったことが窺われますが、その秘密が明らかになるのは最後のオンニの章にて。 途中、オンニが語るように、マリア、ラハヤの2人共、辛いことがあっても弱音を吐かない強さを持っている女性。 4人の誰も、決して完全な人間ではないし、また善良とばかりは言えない面を持っていますが、それでも懸命に力強く生き、家や家族を守ってきたことに疑いはありません。 マリア、オンニが家を大きくしようとするのは、家族を作り守ろうとする象徴のように思えます。 プロローグの病院シーン、マリアの章から強く惹かれ、物語に深く引き込まれます。 4人が交差するところに、辛いことや悲しいことがあっても強く生き抜いた一人一人の姿が浮かび上がってくる、家族の物語。 読み終えた時、初めてプロローグの意味が分かるという構成はまさに圧巻。お薦めです! 1996年病院/マリアの章(1895〜1955年)/ラハヤの章(1911〜1977年)/カーリナの章(1964〜1996年)/オンニの章(1930〜1959年)/1996年屋根裏 |