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Rachel Khong 米国南カリフォルニア育ち。イェール大学卒。フード雑誌 Lucky Peach の編集長を務める一方、フィクション、ノンフィクションの短編を様々な雑誌に発表。長編デビュー作である「さようなら、ビタミン」にて注目を集める。 |
「さようなら、ビタミン」 ★☆ |
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2019年04月
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ずっと同棲していた婚約者から突然に別れを告げられ、呆然としたルース・30歳は、母親からの依頼を受け、1年間実家に戻ることを決めます。 大学教授の父親ハワードがアルツハイマー型認知症を発し、その世話をするため。 その父親、意外と学生たちから慕われていたらしい。かねてから仲の悪かった学部長から、大学構内で講義をすることを禁じられているというのが実情。しかし、父の助手だったシオが中心となり、休講になった教室や研究室を借りたりして本物の講義という体裁を作り出し、父親に講義を続けさせます。もちろんルースも協力して。 認知症が進む父親とその世話をする娘という、温かな家族ストーリィ。 「ささやかで人間的でユーモラスなディテールの積み重ね」というミランダ・ジュライの寸評は、まさにそのとおりでしょう。 ただ、何となく物足りなさを感じたことを否めません。 父親が認知症になった苦労はそれ程描かれませんし、ルースの恋愛問題にも結構ページが割かれています。 温かな家族ストーリィという綺麗ごとで全て終わってしまった、という印象。 |