ロイド・ジョーンズ作品のページ


Lloyd Jones 1955年ニュージーランド生。ヴィクトリア大学卒業後、ジャーナリストとして活躍し、作家に転身。“Biografi(1993)”が「ニューヨークタイムス」で必読書として高く評価される。“Book of Frame(2000)”にてモンタナ・ニュージーランド書籍賞ほか多数、“Maori and the Chicken Farmer(2003)”にてニュージーランド・ポスト書籍賞、“Mister Pip(2006)”にて英連邦作家賞ほか多数を受賞し、ブッカー賞の最終候補にもなる。。

 


  

●「ミスター・ピップ」● ★★☆           英連邦作家賞
 
原題:"Mister Pip"       訳:大友りお

 

 
2006年発表

2009年08月
白水社刊
(2300円+税)

 

2010/01/20

 

amazon.co.jp

1990年初頭、パプア・ニューギニア政府から独立しようと争っていた頃のブーゲンヴィル島を舞台に、物語の面白さを知った少女マティルダの喜びと悲劇を描いた長篇小説。

学校の先生役を頼まれた島で唯一人の白人=ミスター・ワッツが喜んで行い、また生徒たちも喜んで従ったことは、ディケンズ「大いなる遺産」の朗読。
まるで物語というものを知らなかったマティルダをはじめ生徒たちは、物語の面白さを知り、物語世界を知ることの喜びを手に入れます。
それなのに、「大いなる遺産」の主人公=ピップの名前が、村人全員に悲劇をもたらすとは・・・。

ブーゲンヴィル抗争の最中、大いなる悲劇を味わった少女マティルダ。それでも彼女にはどこか明るさが感じられます。
それは何故かというと、現実世界とは別の物語世界を、彼女がしっかりと手中にしているから。そしてまた、ピップという小説中の人物をいつも身近に感じていることができたから。
私が子供の頃、初めて「三銃士」や「十五少年漂流記」などの物語世界に出会った頃のことを思い出します。
物語世界を知ったことで、どんなに世界が広がったことか。そしてまた、夢が膨らんだことか。
マティルダが感じた喜びも、きっと同じものであるに違いありません。
悲運に挫けず、マティルダが真っ直ぐに成長することができたのは、ピップを同胞の友としていたからに他ならない、と私は思います。

ブーゲンヴィル抗争とそれに巻き込まれた悲運を背景にしつつ、原始的な島の暮らしの中で物語世界の面白さを知った少女の姿を鮮やかに描いた長篇小説。
ストーリィは平明で文章も判りやすく、とても読みやすい。
本好きの方に、是非お薦めしたい一冊です。

    


   

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