ソル、父ランダル、祖母セイディ、曾祖母クリスティーナ各々が各章の主人公となって語る、4世代に亘る一族の年代記。
常に語り手は6歳の子供であることと、古くから語り始めるのではなく年代を逆に過去へと遡っていくというスタイルの4章構成が、抜群に面白い。
第1章の語り手となる主人公は、現代の米国カリフォルニアに暮らす少年ソル。
このソルがひどい我儘であって、そのくせ自意識だけは過剰と、実に鼻もちならない子供。それでも嫌になるどころか、冒頭から物語の面白さを感じてワクワクと胸ときめかしてしまうのですから、本作品、ただものではない。
そんなソルからみても、世界的に有名な歌手である曾祖母のAGM=エラ、車椅子生活者ながら講演で世界中を飛び回っている祖母セイディは実に個性的です。
そんな曾祖母と祖母の間に何故長年にわたる確執があるのか、一族にどんな過去が秘められているのか。年代を遡って4世代の歴史が語られていくだけに、まるで歴史上の謎をひも解いていくような興奮、面白さが本書にはあります。
また、ソル、ランダル、セイディ、エラの一人ずつを主人公として描く各章ストーリィが、感傷的に陥ることなく、実に歯切れ良いのも本作品の魅力のひとつ。
そして、読めば読むほど、過去に遡るほど謎は大きく深まっていくという展開に、読みながら興奮が抑えられません。
尽きぬ面白さ、という言葉は本作品にこそ相応しい、と言って過言ではありません。
本作品で一番魅力ある人物は、エラ=クリスティーナであることは間違いないところ。
曾祖母、人当たりの良い祖母、自由奔放な母親、歌の好きな少女と様々な顔を見せつつ、それと共に彼女の送った波乱の人生が謎解かれていくのですから。
そして読者は最後に悟ります。エラが語ったように、後の世代の人間が本人に対してあれこれ言う権利など無いのである、ということを。
読み終わった時、読者はきっと、最初からまた読み返したくなるに違いありません。
第一章
ソル、ニ○○四年
第二章 ランダル、一九八ニ年
第三章 セイディ、一九六ニ年
第四章 クリスティーナ、一九四四〜一九四五年
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