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「ハルビン」 ★★☆ |
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1909年10月26日、ハルビン駅で朝鮮人の安重根(アン・ジュングン)が、元韓国総監の伊藤博文を銃撃し死に至らしめた事件が発生。 その安重根は、どんな思いでその行動に及んだのか、そのことを描いた歴史作品。 本書、韓国で33万部超のベストセラーになったそうです。 韓国作家による作品ですから、安重根を英雄として描いても不思議ないところですが、作者にそうした姿勢はみられず、韓日双方の立場から公平に描いている、という印象です。 (※だからといって日本の侵略を是認するものではありません) 一方、安重根が伊藤博文を殺害したことに、何の意味があったのか、とも思います。 事件によって日本の朝鮮支配を留めた、抗日運動を盛り上げた、ということもなかったようですから。 本作に描かれた安重根の言動からすると、抗日運動ではなく、あくまで個人的な行動。 そしてその動機は、一人の朝鮮人として伊藤博文に、広く社会に言いたいことがあった、ということのように感じられます。 時間を1909年に戻し、あたかも読者をして、安重根と同一時間を共有したかのように感じさせてくれます。それだけでも本作の意義は大きいと言いたい。 是非お薦めしたい佳作です。 ※なお、安重根の行動を何も知らないまま、その結果として悲運な人生を送ることになったその妻、子どもたちの身の上を考えると、余りに切ない。 |