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●「あなたはひとりぼっちじゃない」● ★★ |
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2004/09/15
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孤独かつ哀しみに充ちた、9篇の清澄な短篇集。 9篇の主人公たちはいずれも、どこか普通と違うところを抱えており、そのことに痛みと孤独感を抱えている。ゲイであったり、鬱病であったり、死期間近であったりと、その事情は様々。 そしてそのことで、時に自分のみならず、他者をも傷つけていることがある。それが判っていながら、自分でどうすることもできない。どのストーリィからも、そんな哀しさ、切なさが伝わってきて愛おしい。 決して解決が与えられる訳ではありませんが、それでもどこか救われる途のあることが感じられ、明るい気持ちを持ち続けることができます。 本書題名は「戦いの終わり」に登場する老婦人の言葉とのこと。どこか心に安らぎを得られるところが本短篇集の最大の魅力なのですが、そうした情趣を表すのにこれ以上ふさわしい題名はないでしょう。極めて良質の短篇集です。 9篇の中では、妄想症の父親とゲイの息子を描く「私の伝記作家へ」、同じ男性を愛した故に哀しみを抱き続ける姉弟を描く「献身的な愛」、妻に気遣われる重荷から解放されたいと願う夫を描く「戦いの終わり」、父親を偲びつつ一人静かに死期を迎える男性を描く「再会」の4篇が、特に忘れ難い。 私の伝記作家へ/名医/悲しみの始まり/献身的な愛/戦いの終わり/再会/予兆/父の務め/ヴォランティア |