1997年発表
1998年05月
新潮社刊
(1700円+税)
2004年07月
新潮文庫化
1999/01/07
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著者自身の父親との関係をノンフィクションとして書き上げた作品。
これまで自分の人生をフィクション化して嘘をついてきたことを清算したいという決意が、4冊目の小説の執筆に行き詰まった時に生まれたということです。
静かに真実のみを書き綴っている、という雰囲気が印象的です。
虚飾も自己憐憫もすべて捨て去って自分のこれまでの人生を清算したい、という気持ちが強いからなのでしょう。
一人称かつ現在形で語られるストーリィは、臨場感を強く読者に与えます。
父親と母親と本人との緊張関係、また母親と祖母との緊張関係がそこにはありますが、それ以上に子供の頃からその緊張関係に放り込まれ翻弄されてきた娘(著者)の悲しみを深く感じます。
興味本位に著者と父親との間の近親相姦ストーリィを読もうと思うと、予想外の感じを受けるのではないでしょうか。近親相姦はあくまで上記の結果のひとつにしかすぎないのですから。
※本書のことはともかくとして、アメリカ小説の題材になんと近親相姦が多く出てくることか。最近読んだ中では、A・ヘイリー「殺人課刑事」もそうでした。経済的に豊かである一方で精神的に病んでいるアメリカという社会に、危惧を感じざるをえません。
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