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「変わったタイプ」 ★★☆ |
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2018年08月
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えっ、同姓同名と最初は思いましたが、名優トム・ハンクスその人自身による小説集と知り、驚きました。 2014年から3年の間に書き溜められ、61歳にして初の小説集刊行となったのだとか。 まず感じたことは、文章が滑らかで、読みやすく、判りやすいこと。また、その文章についてはベテラン作家のものと言われても何の疑念も抱かない程です。お見事、という一言に尽きます。 そして、素晴らしいのは文章のことだけでなく、ストーリィに描かれる情景がすぐ目の前に浮かぶところ。 この辺りは、長年にわたりいろいろな役をこなしてきたトム・ハンクスだからでしょうか。 ストーリィは、コミカルなものからちょっと深刻なもの、そして過去の話もあれば、タイムマシンといったSF的なストーリィまであると、まさに多種多彩。 各篇、主人公はごく普通の人々ばかり。また、特別にドラマチックとか、感動を誘う、といった作品はありません。 でも、温かみのある可笑しさがあったり、この篇はホントに好きだなぁ、と思う作品が幾つもあり。 それが私にとってはとても嬉しいこと。 そうそう、本書各篇には必ずといって良いくらい、タイプライターが登場します。聞けばトム・ハンクス、タイプライターのコレクターとして知られているのだとか。 タイプライターを念頭に入れて読むと、きっと読みやすい筈。 (※各章の前にタイプライターの写真付き。) なお、好きだなぁと思った作品は次のとおり。 ・「へとへとの三週間」:コミカルです。結末がにくい。 ・「グリーン通りの一ヵ月」:理屈抜きで、好いんだよなぁ。 ・「アラン・ビーン、ほか四名」:何と月を周回する宇宙旅。 ・「配役は誰だ」:売れない女優の、掛け合いが楽しい。 ・「心の中で思うこと」:タイプライターをめぐる小物語。 ・「過去は大事なもの」:1939年の過去にタイムトラベルした主人公は、そこで出会った女性に惹きつけられ・・・。 へとへとの三週間/クリスマス・イヴ、一九五三年/光の街のジャンケット/ハンク・フィセイの「わが町トゥデイ」-印刷室の言えない噂/ようこそ、マーズへ/グリーン通りの一ヵ月/アラン・ビーン、ほか四名/ハンク・フィセイの「わが町トゥデイ」-ビッグアップル放浪記/配役は誰だ/特別な週末/心の中で思うこと/ハンク・フィセイの「わが町トゥデイ」-過去に戻って、また戻る/過去は大事なもの/どうぞお泊まりを/コスタスに会え/ハンク・フィセィの「わが町トゥデイ」-エヴァンジェリスタ、エスペランザ/スティーヴ・ウォンは、パーフェクト |