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Lauren Groff 1978年米国ニューヨーク州生、ウィスコンシン大学大学院で創作を学ぶ。「ニューヨーカー」等の雑誌に短篇を発表。「アメリカ短篇小説傑作集」に収録されて注目を集める。 |
「運命と復讐」 ★★☆ |
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2017年09月
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恋愛小説に“大河”という装飾は相応しくないと思うのですが、本作はまさに“大河恋愛小説”と言う他ない一作。 深い愛情で結ばれた一組の夫婦、ロットとマチルダ。彼らの幼年時代まで遡り、第一部では夫ロット側、第二部で妻マチルダ側の波乱万丈の人生と2人の結婚生活を描くという構成です。 ロット。学生時代から演劇に嵌り込み、女性にモテてやりまくり状態でしたが、打ち上げパーティでマチルダに出会うが一目で恋に落ち、即結婚申し込み。以降は彼女一筋。但し、役者としては全く目が出ず生計はマチルダに頼りきりでしたが、初めて書いた戯曲が好評、一躍劇作家として成功します。 しかし、結婚後20年も経ってから、純粋な女性と思い込んでいた妻の思わぬ事実を知り・・・。 第二部では、ロット急逝後のマチルダの虚脱した暮らしぶりと、ロットと出会う前、そして出会った後の回想が並行して描かれます。そこには、ロットのまるで気づかなかった真相が語られていく・・・。 ロットの放埓な少年時代、運命的なマチルダとの出会い、俳優としての挫折と劇作家としての成功、それだけでも波乱万丈な物語に仕上がっているのですが、第二部で明らかにされるマチルダの人生はそれを超える、遥かに波乱万丈な物語。 母親アントワネットから流刑に遭い、マチルダとの結婚に反対され援助を拒まれたといっても、ロットには彼を愛してくれる妹レイチェルや叔母サリーという家族、チョリーやサミュエルといった幼馴染・親友がいたのに対し、マチルダの身の上はいかなるものだったのか・・・・。 結局ロットは愛されることに慣れ過ぎ、純真なぼんぼんで、マチルダが担っていた苦労などまるで想像すらつかなかったのでしょう。しかしそれは、ロットだからのことではなく、世の“夫”という男性は一様に“妻”が負わされている献身部分をまるで理解していない、という批判に通じるものではないかと思います。 マチルダ、利己的で執念深いところも多分に持っていた女性ですが、ロットを愛して大事にし、自分を犠牲にしてまで献身的に尽くしていたという面もまた事実。 ロット、マチルダ、それぞれの人生ドラマだけでも十分読み応えあるのですが、両方が合わさって 500頁超という大部な一冊。 でも面白く、第二部で2人の夫婦人生の真相が一枚一枚、剥がされるように明らかになっていく展開は、思わず興奮させられるほどスリリング。 最後は壮大なドラマに圧倒され、まさに言葉も出ない、というところ。 お薦めです! |