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「光の子供」 ★★ フェミナ賞 |
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主人公のジルは40歳前の弁護士でバツイチ。彼は、自分の母親が誰なのかを全く知らない。父親は映画スタジオの写真家で、関わった女優の一人だったとジルに告げたのみで、何の手がかりも残さずに死んだ。 そのためジルは、パリの映画館を渡り歩いて、ヌーヴェル・ヴォーグ時代の映画を観続けている。母親が画面に映れば、自分には母親と判る筈だと信じて。 そんな映画館のひとつ=トロワ・リュクサンブール映画館で出会ったのがマイリス・ド・カルロという36歳の既婚女性。 一目で惹きつけられたジルは、マイリスとの再会を約し、やがて2人は逢引きを重ねるようになり、パリの中心街やカフェを彷徨います。 パリという街の光と影、文章の合間からはそんな印象を強く感じます。 一応長編小説なのですが、一章一章が短く、スケッチ画を重ねるような構成がいかにもそれに相応しい。 自分が知らない母親の姿を執拗に探し続ける一方で、マイリスとの情事は次第に泥沼化していきます。何故人妻とのそんな愚かで危うい関係に足を踏み入れていくのか、勿論疑問を抱かざるを得ないのですが、そこに本作品の鍵もあるようです。 最後は衝撃的なエンディング。 ストーリィともつかぬ本ストーリィに幕を降ろすには、こうした一気の展開が欠かせなかったのかもしれません。 読後に残るのは、やはり光と影、そして母親の姿を探し求めてきた男性の残像です。 |