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  マイヤー・フェルスター作品のページ


Wilhelm Meyer-Forster  1862-1934 ドイツの作家。

 


   

●「アルト=ハイデルベルク」●   ★★★
 原題:“ALT-HEIDELBERG

 

1901年発表

1980年02月
岩波文庫刊

 

1980/06/15
2001/05/20

“青春”という言葉にこれ程似つかわしい作品はない、と思う古典的名作戯曲。それにも拘らず、解説によると母国ドイツでは忘れられた作品とのこと、残念です。
ネッカー河のほとり、古城の残る学生の街、ハイデルベルク
ザクセン=カールスブルク公国皇太子のカール・ハインリヒが、1年間の留学を許され、このハイデルベルクへ老家庭教師と共にやってきます。
其処には幾つもの学生団があり、議論やコンパで大ジョッキのビールを飲み交わすといった、多くの学生が青春を謳歌する所。最初当惑したカール・ハインリヒも、直に溶け込み、周囲を凌駕する程初めての自由奔放な生活を謳歌します。ところがたった4ヶ月、大公重病の為、やむなく彼はこの地を去ります。
そして2年後、大公カール・ハインリヒは最後の思い出にとハイデルベルクを再訪しますが、当時の熱気は既に失われています。彼を以前と変わらずに迎えてくれたのは、旅亭リューダー館の娘ケーティただ一人。
北ドイツ・カールスブルクの儀式ばった宮廷と、美しく開放的なハイデルベルク。堅苦しい内侍と人間らしい家庭教師。それらが対照的に描かれ、忘れ難い思いが読後に残ります。
私もかつてハイデルベルクを訪れましたが、如何にもこの物語にふさわしい雰囲気をもった街です。そしてまた、東山魁夷画伯「緑のハイデルベルク」の画が、いつまでも鮮やかにこの街の姿を思い出させてくれます。
ただ、このカール・ハインリヒという主人公はやや女性的。その点、雄々しく自分の運命に立ち向かったハル王子シェイクスピア「ヘンリー四世・第一部」)の方が、私の好みです。

 


   

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