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Alice Ferney 1961年仏パリ生、エセック経済商科大学院大学卒。オルレアン大学で経済学の教鞭をとる傍ら文筆活動を開始。1997年刊行の「本を読む人」はフェルミナ賞最終候補となり、「みんなのための文化と図書館賞」を受賞。 |
「本を読むひと」 ★★★ みんなのための文化と図書館賞 |
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2016年12月
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大家族のジプシー一家と図書館員の女性との交流を描いた長編。 放置されて荒れ果てた状態にある空き地を不法占拠して暮らすジプシーの一家。 57歳のアンジェリーヌを頭にして、その5人の息子、4人の嫁、そして孫たちが数台のキャンピングカーで暮らしている。 子供たちは学校に行くこともなくゴミ捨て場のような地面の上で遊びまわり、親たちは文盲であることに何の問題意識も感じていない。 そんなジプシー一家の元に一人の図書館員女性が入り込んできます。そのエステール・デュヴォは、歓迎されているかどうかを気に留めず、毎週水曜日に一家の元を訪れ、子供たちに本の読み聞かせをします。人には本が必要であるという強い信念から。 ジプシーを題材にした小説を読むのは初めてでしたので、彼らがどんな生活を送っているのかを知ることができるのも興味のひとつ。とくに男性たち、女性たちの対照的な姿が鮮烈。 しかし、本書の素晴らしさは彼らがジブシーであることに捉われず、エステールが同じ人間同士として子供たち、そしてアンジェリーヌや親たちに向かい合っている処です。 本がそれを介在するだけの力を持っているということも本好きとしては嬉しい点ですが、お互いの間に信頼というものが芽生えなかったら、人と人としての交流が生まれることはなかっただろうと思います。 エステールとの出会い、そして彼女によって本と出会ったことが、ほんの細やかなことかもしれませんが、彼らを少し変えることに繋がっていく。 ジプシーの昔ながらの生活を続けるか、現代的な生活に切り替えるか、要は<選択>の問題なのだと感じます。 本作が感動的な物語であるかどうかは別として、心に沁み入るような詩的な美しさ、充足を感じさせる逸品。 本書がフランスでロングセラーになっているという事実も当然のことと納得がいきます。 お薦め! |