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Margaret Drabble 1939年英国シェフィールド生。ゲンブリッジ大学で英文学を学ぶ。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの女優を経て、63年「夏の鳥かご」にて作家デビュー。65年、未婚の母親を描いた「碾臼」がベストセラー。文芸評論家としても活躍。2011年には功労賞の「ゴールデン・ペン・アワード」を受賞。※姉はブッカー賞作家のA・S・バイアット。 |
「昏い水」 ★★ |
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2018年02月
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人生の終盤、老境に至った人たちの、今を生きる姿を群像劇風に描いた長編ストーリィ。 主人公のフラン・スタブズは、70代の今も住宅福祉の仕事に各地を駆けずり回っている日々。そんな忙しい中で、離婚した最初の夫クロードの現状を見かねて定期的に食事を作って届けている。 そのクロード曰く、フランは少しも落ち着いていられない女、という。 2人の息子であるクリストファーは、2番目の妻セイラの突然の発症・急死にショックを受け、その心を癒そうとカナリア諸島に住むベネットとアイヴァーという老いたゲイのカップルを訪ねていく。 一方、フランの旧友であるジョゼフィーン・ドラモンドは、フランとは対照的に夫と高級老人ホームに入居し、安穏な年金生活を送っている。 その他にも、数多くの人物が登場します。 そうした人たちの姿から感じられるのは、もはや自分が人生の終盤にいるという認識、そしていつまで生きていられるのか、というところから来る哀感です。 しかし、だからといって皆が皆、暗く落ち込んでいるという訳ではありません。 そんな状況でも、まだ生きているんだという開き直りにも似た強い気持ちが感じられますし、そうしたところにちょっぴりユーモアがないではない。 一口に老人といってもそれぞれの状況、考え方、思いは様々。 でももはや、私にとっては他人事ではありません。そうした状況はもう、すぐ目の先にあるのですから。 そうした思いを持ちながら読んでいると、何やら本書は、この先の参考書のように思えてきます。 |