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1.オスカー・ワオの短く凄まじい人生 2.こうしてお前は彼女にフラれる |
1. | |
「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」 ★★★ |
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2011/03/25
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読み始めの冒頭からぶっ飛んだ!という一言に尽きる作品。 そして、ぶっ飛んだと同時に、これがまた面白い!のです。 とくに本物語第一の主人公=オスカー・ワオ、デブでオタクのドミニカ系青年というキャラクターなのですが、これが日米のSFやファンタジー小説、アニメやコミックの極め付けオタク。デジャー・ソリスからレンズマン、スタートレック、それにウルトラマンや宇宙戦艦ヤマトの名前まで飛び出してくるのですから、何ともはや。海外の文学作品でウルトラマンの名前が登場するなんて、本書の他には有り得ないのではないでしょうか。 ストーリィは、舞台をドミニカと米国NYをまたにかけた、ドニミカ系家族・三代に亘る物語。 まずは米国でオスカー、次いで姉のロラ、そしてドミニカで娘時代の母親ベリ、祖父アベラード、祖母ラ・インカと時代を遡り、そしてまたオスカーに戻るというストーリィ構成。 オスカーにしても、姉ロラ、母親ベリにしても、その行動たるや滅茶苦茶、まるで破れかぶれか?という風です。 何でこんなにも?と思うのですが、そこは本書冒頭で説明されています。“フクの呪い”と。 羽目がどこか外れてしまったような一家の歴史も、カリブ海の呪いの所為と説明されると、ストンと納得できてしまうのです。 ストーリィだけをみれば、オスカーをはじめ、愚かしいとも馬鹿げているとも言える行動ばかりなのですが、それでいて何とも彼らが愛おしく感じられます。 ふと、スターン「トリストラム・シャンディ」を連想させる、型破りな傑作長篇。 読む人の好み次第とは言うものの、お薦めしたい一冊。 |
2. | |
「こうしてお前は彼女にフラれる」 ★★☆ |
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2013/09/14
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ドミニカ男の猥雑で愚かしく、極め付けに滑稽な、9つのストーリィ。 主人公は、「オスカー・ワオの短くも凄まじい人生」でオスカーのルームメイトとなり、作品の語り手も務めたモテ男のユニオール。 「こうしてお前は彼女にフラれる」という本短編集の表題、幾ら何でも奇妙ではないかと思っていたのですが、これが読み始めてみると全く9ストーリィの内容そのものズバリと判ります。 最初から最後まで、折角モノにした彼女にフラれまくり。それも原因はすべて浮気のバレまくり。浮気相手が彼女宛てに手紙を寄越したり、捨てた携帯電話から浮気メール50人分を見つけられたり、日記を彼女に読まれたりというのですから、少しは浮気を隠す知恵がないのか?と呆れてしまう(なお、その時の彼女はそれぞれ別人)。 とにかくストーリィの中身といえば、男と女が出会えば考えることはヤルことばかり。相手かまわず状況かまわずヤリまくりという風なのです。これじゃあ浮気がバレるのも当たり前という具合なのですが、それはもうドミニカ男気質という他ないのでしょう。 青年時代の物語から、中盤少年時代に遡り、最後は壮年時代と、要はセックス絡みの話ばかり。 何だこの愚かしいストーリィは!、と最初こそ感じていたのですが、何度も同様のことが繰り返されている内、気付くとそのどうしようもない滑稽さに心の底から可笑しさが込み上げてくるようになりました。 ドミニカ男たちの性懲りもない愚かしさ、底抜けに滑稽なところが本短篇集の魅力。 中でも僅か5頁に過ぎませんが、「アルマ」が傑作!。 太陽と月と星々/ニルダ/アルマ/もう一つの人生を、もう一度/フラカ/プラの信条/インビエルノ/ミス・ロラ/浮気者のための恋愛入門 |