ジェフリー・ディーヴァー作品のページ No.2



11.バーニング・ワイヤー
−リンカーン・ライム&サックスNo.9−

12.シャドウ・ストーカー
−キャサリン・ダンスNo.3−

13.スキン・コレクター
−リンカーン・ライム&サックスNo.11

14.煽動者
−キャサリン・ダンスNo.4−

【作家歴】、ボーン・コレクター、コフィン・ダンサー、エンプティー・チェア、石の猿、魔術師、12番目のカード、ウォッチメイカー、スリーピング・ドール、ソウル・コレクター、ロードサイド・クロス

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11.

●「バーニング・ワイヤー」● ★☆
 原題:"Burning Wire"           訳:池田真紀子


バーニング・ワイヤー画像

2010年発表

2012年10月
文芸春秋刊

(2400円+税)

2015年11月
文春文庫化
(上下)


2012/10/30


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心温まるストーリィばかり読んでいると、時に重厚な米国サスペンス長篇を読みたくなるもので、そうした時に手が出やすいのはやはり親しんだシリーズもの。という訳で、一度はもう読むのを止めようかと思ったものの、引き続き読んでいるという次第。
本書は、
リンカーン・ライム&サックスのシリーズ第9作目。

今回の犯人、というより憎むべき敵は、電気を操り、無差別に無関係な多数の人間を死に至らしめる凶悪犯。その性質の悪さは、感電が恐ろしい死に方を当事者にもたらすこと。その死に方のおぞましさに、サックスさえ捜査中何度もその恐怖に襲われることになります。
また、電気は目に見えない故に避けることが難しいうえ、町中至る所に電気はあり、罠が仕掛けられても察知するのが困難というに尽きます。
犯人の恐ろしさというよりその犯行の非道さによって、本ストーリィの緊迫感はこれまでの8作に勝るとも劣らず。
一方、上記事件の傍らライムは、カリフォルニア州捜査局の
キャサリン・ダンスならびにメキシコ連邦警察と連携して、逃亡中の凶悪犯ウォッチメイカーを追い詰めようとしています(3度目の対決とのこと)。
電気を利用したテロを繰り返す犯人とウォッチメイカー追跡劇がどう関係するのか、あるいは関係ないのか、それは最後まで読んでみて初めて判ること。

予想もできない展開と真相、ライム自身に迫る危機、そして大ドンデン返し。それなりに、本シリーズいつも通りの面白さが味わえます。その点に過不足なし、というところでしょうか。
※なお、前作で愛車
カマロが廃車やむなきに至ったアメリア・サックスが本作からぶっ飛ばすのは、トリノ・コブラ

          

12.

「シャドウ・ストーカー」 ★☆
 原題:"XO"           訳:池田真紀子


シャドウ・ストーカー

2012年発表

2013年10月
文芸春秋刊
(2400円+税)

2016年11月
文春文庫化
(上下)



2013/11/04



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キネシクス(証人や容疑者のボディランゲージや言葉遣いを観察し分析する科学)の天才であるカリフォルニア州捜査局の捜査官=キャサリン・ダンスを主人公とする新シリーズ第3弾。
今回の強敵は、影のようにターゲットにまつわりつく悪質なストーカー。そして連続して殺人事件が発生。犯人を示す証拠は何も残されておらず、捜査陣はストーカーに振り回されるばかり。

人気上昇中の女性カントリー歌手=ケイリー・タウンは、最近執拗なファンからのストーカー行為に悩まされていた。休暇でフレズノを訪れていたキャサリン・ダンスは親交のあるケイリーからその相談を受けますが、折しもケイリーのクルーが事故に見せかけて殺害されるという事件が発生。ダンスは地元警察に協力して捜査に臨みますが、頭の良いストーカーのエドウィン・シャープは証拠を掴ませない上に、捜査陣を翻弄するばかり。
さらに事件が続けて起こり、ダンスと地元保安官事務所の捜査陣は懸命に犯人を追いますが捜査は一転二転・・・・。犯人は果たしてエドウィン・シャープなのか。

キャサリン・ダンスの持ち味であるキネシクスは、どうも限界があるようで、特定の人物から情報を聞きだす上では効力を発揮しますが、何もない状態から真実を掴みとろうとするのは困難。
それもあってか、終盤、ダンスと親しい関係にある
リンカーン・ライムアメリア・サックスも特別出演、部分的に捜査に協力します。しかし、事件はまだまだ終わらない。

一転二転する長編サスペンスを楽しむ、というに尽きる作品。まぁそれは如何にも米国流ではありますが。

※なお原題の「XO」は、メールの文末などに日常的に使われる“キスとハグ”を示す文字だそうです。今回のストーカーは、ファンレターに対する返信にあるそれを自分個人に対する好意だと勘違いしているのではないか、というのが本書の出だし。

            

13.
「スキン・コレクター」 
 原題:"The Skin Collector"           訳:池田真紀子


スキン・コレクター

2015年10月
文芸春秋刊
(2350円+税)

2018年12月
文春文庫化
(上下)


2015/11/15


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“リンカーン・ライム&サックス”シリーズ第11作目。
このシリーズもいい加減に飽きた気がして10作目の「ゴースト・スナイパー」は見送ったのですが、シリーズ第1作の
ボーン・コレクターを彷彿させる題名となれば、どんなストーリィかと気を惹かれずにはいられません。

しかしながら結果はというと、これまでのシリーズ作品の延長で、特に変わることなし。つまり、マンネリ化の印象は従来どおりということ。
以前の作品であれば、リンカーン・ライムがその独特の操作方法で次第に犯人を追い詰めていくという雰囲気があった筈なのですが、本作品では逆に犯人からの攻撃を受け、ライム側は防戦一方にして後手に回るばかり。むしろ“犯罪小説”と言った方が良いようなストーリィ展開です。

最後、ディーヴァーの巧妙な仕掛けにより、読者も含めて右往左往させられますが、むしろ面白さを損なっているという観があります。
冒頭
ウォッチメイカーの処刑についてライムらの会話があり、最後でも「ウォッチメイカー」が絡みます。次作へ読者を惹きつけるための誘いと思いますが、不要なものという感じがします。

1.絶版本/2.アンダーグラウンド・マン/3.赤いムカデ/4.アンダーグラウンド・ウーマン/5.再会/6.皮膚(スキン)と骨(ボーン)

              

14.
「煽動者」 ★☆
 原題:"SOLITUDE CREEK"           訳:池田真紀子


煽動者

20XX年発表

2016年10月
文芸春秋刊
(2400円+税)



2016/11/05



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キネシクスの天才、カリフォルニア州捜査局の捜査官=キャサリン・ダンスを主人公とする新シリーズ第4弾。

率直に言ってディヴァーに飽きも来ていますが、一方で骨太の米国サスペンスをたまには読みたいという気持ちもあって、その両方の思いを抱えたまま読みました、シリーズ4作目。

今回、冒頭でダンスがキネシクスに失敗し麻薬組織の殺し屋を無関係者と釈放してしまったことから、責任を問われ麻薬組織合同捜査捜査班から外されて(新米刑事が担当する様な)民間トラブルを担当する民事部へ。
ちょうどその時、コンサート会場で火事騒ぎが起き、観客たちが出口に殺到したため多数の死傷者が出るという大惨事が起きた処。
しかし、それは単なる事故ではなく、緻密に計画された犯行だったことが判り・・・・。

日本でも人混みでパニックが起き大勢の死傷者が出るという事故が発生していますから、想像しただけで、この犯人がどんなに恐ろしい犯行を繰り広げているのか実感できます。
そんな犯罪故に、ダンスたちは常に後手、後手に回らざるを得ません。そこをどう逆転して犯人に迫るか、そこが見所。
さらに、麻薬組織捜査をダンスが諦めたわけではない、というところも中々欲張りです。

犯行の恐ろしさが強烈。それに比べると捜査手法はそれ程印象に残らなかったという具合です。
なお、キャサリン・ダンスの一身上の変化も、シリーズ作品としては見逃せません。


4月4日 火曜日 パニック/4月5日 水曜日 ベースライン/4月6日 木曜日 ゲット/4月7日 金曜日 予防線/4月8日 土曜日 フラッシュモブ/4月9日 日曜日 シークレット・クラブ/4月10日 月曜日 すべての者の血/4月11日 火曜日 最後の挑戦

   

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