1997年11月
ハヤカワ・ミステリ文庫刊
(680円+税)
1998/09/27
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20世紀初頭、霧のサンフランスシコに魅力的な素人探偵が登場!
この作品の楽しみは、何と言ってもガス灯時代のフランシスコという舞台と、それに優るフリモント嬢という若い主人公の魅力的な個性にあります。
ボストンの実家を出た主人公が選んだのは、サンフランスシコでのタイピング・サービスという自活の道。
美人で、きりっとしていて、おおらかで冷静かつ勇敢、向こう見ず。かつ正直で率直。また自立心、責任感も充分。一方で、意地っ張り、他人に容赦なく、好奇心・想像力とも旺盛。おまけにコルセットをつけないという先進性。魅力的と思える要素を充分過ぎるくらいに抱え込んでいます。
フリモント嬢の個性発揮ぶり、サンフランシスコの雰囲気を読んでいるだけでも楽しいのですが、エドガー・アラン・ポーばりの作中小説、少しばかりの事件の決着ぶりもなかなかに楽しめます。
作中小説はそれだけでも読み応えあるもので、久世光彦「1934年冬−乱歩−」を思い起こさせられます。
本書はシリーズもので、第三作まで刊行されているとのことです。
※ちなみに、本書を読んだ動機は、作中にオースティン「自負と偏見」「ノーサンガー寺院」が引用されていると聞いて。(^^;)
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