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●「サフラン・キッチン」● ★★☆ |
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2006年08月
2006/09/29
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イラン人である母親マリアム、英国人の夫との間に生まれた娘サラ、その2人の女性の物語。 この作品はロンドンで開かれたブックフェアで、まだゲラ刷りだったにもかかわらず多くの注目を集め、様々な国での出版が決まって話題になったとのこと。本国イギリスでも本年5月に出版されたばかり、しかも処女作だというのですから驚きです。 いったいどんな作品なのだろうと半ば期待、半ばまさかと思いつつ読んだのですが、(マリアムとサラが交互に第一人称で語る部分に戸惑いを覚えたものの)情に流されず淡々として、しかも品格のある美しささえ感じられる本作品には、完全に脱帽です。評判になるのも当然、それだけの価値ある作品と納得。
妊娠中のサラに起こったアクシデント。その結果サラは流産し、そのことに責めを感じたマリアムは、救いを求めるかのように母国イランへ旅立ちます。
何もドラマチックなストーリィが展開されるという訳ではありません。若い頃の思い出を慈しみ、自らの原点に立ち戻りたいというしむ気持ちは誰にでも起きるものでしょう。
マリアムと英国人の夫エドワードとの夫婦関係、サラと夫ジュリアンとの夫婦関係、風習に縛られて生きるイランの女性たち。そして、マリアムとかつての恋人アリとの関係。 |