各界で顕著な活躍をしている卒業生を表彰するという名目の下、かつてのハイスクールから20年ぶりの同窓会通知が届く。合わせて親しかった亡き友人の追悼式が行われるということもあって、歴史学教授でベストセラー作家でもあるジーン・シェリダンは卒業以来初めて故郷へ戻ります。
ホテルに着いた彼女を待っていたものは、ジーンが18歳の時密かに産んでそのまま養女に出した娘リリーへの危害を匂わすファックスだった。
そして同窓会に出席したジーンが知ったことは、かつてランチを一緒に囲んだ女学生7人のうち5人までが既に死亡しているという事実だった。そして残る2人の一方、ローラまでが同窓会の間に行方不明になる。
故郷に戻った主人公が過去に端を発する事件に巻き込まれるというのは、米国のサスペンス小説では多いパターンかもしれない。それだけ米国では、故郷を出て活躍するという成功ストーリィが多いからなのか。パタースン「最後の審判」「サイレント・ゲーム」、デミル「スペンサーヴィル」が思い出されます。 本作品では、最初から犯人が姿を現し(勿論誰かは知らされません)、自らを“梟”に模する犯人とジーン、そしてジーンに協力して犯人を追うベテラン刑事サム・ディーガンらの側がそれぞれ並行して描かれ、最初から最後まで常に緊迫したストーリィが展開されていきます。
犯人が同窓会に参加した男性6人の内の一人に違いないことは、早い段階で明らかにされています。
サスペンス小説ではよくある手だと思いますが、頁を繰る手が止められないのは、作者クラークの語りの上手さ故でしょう。
犯人の手がかりがあちこちに散らばめられますが、それを受ける人物が同一人でない故に、じれったいくらい捜査が進展せず、誰が犯人なのか最後まで明らかにされません。
緊迫感は最初から最後まで決して衰えることなく、しかも最後の最後にはこちらの心臓がぎゅうっと締め付けられるくらいまで緊迫感・焦燥感が高まります。いやはや、お見事なもの。
ストーリィの中味としては格別なものではないと思いますが、語りそして展開の上手さには、すっかり脱帽です。
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