一作だけの小説作品を残して自殺した作家ユルス・グント。
その伝記が書きたいので公認して欲しいという手紙が、南米ウルグアイの人里離れた邸宅に住む遺族の元に届きます。
手紙の差出人は、米国カンザスに住む大学院生オマー・ラザギ。
断りの手紙を出したところ、恋人に尻を叩かれたオマーがウルグアイまでわざわざ公認を求めてやって来たことから、静かな生活を送っていた遺族の間にさざ波が立つことになります。
ウルグアイの邸宅には、亡き作家の妻=キャロラインと、愛人だったアーデンとその娘のポーシャが同居。その近所に作家の兄=アダムがパートナーの青年と一緒に住んでいるという状況。
そこへまずオマーが押しかけ、さらにオマーの恋人であるディアドラまで押しかけてくる、というストーリィ。
まず印象的なのは、本作品がとても読みやすい小説であること。
平明で気取ることなく、親しみやすい。好きにならずにはいられない小説、そんな感じです。
そして、アーデン、ポーシャ、キャロライン、アダム、オマーという主要人物の造形がくっきりしていて、とても明瞭。
軽やかで、知らず知らずの内に伝わってくるユーモア、そして陰影。何とも愛おしい。
楽な気分で読めるのは、彼ら彼女たちに余計な技巧、思い込みがなく、自分たちの本心に素直だからでしょう。 「最終目的地」という題名も秀逸。アーデン、キャロライン、アダムにとって、ここウルグアイのオチョス・リオスという土地は最終目的地なのでしょうか。
また、オマーにとっては作家の伝記を書いて名を挙げるために目指すべき目的地だったのでしょうか。
最終目的地とは何ぞや? それを考えながら本書を読み進むのも楽しい。 400頁余という長篇小説ですが、少しも長さは気にならず、ストーリィに重さを感じることもありません。軽々と楽しみながら、いつの間にか読み通してしまったという気分です。
小説好きの方に是非お薦めしたい、読むこと自体が楽しい一冊。
|