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「モナ・リザのニスを剥ぐ」 ★★☆ |
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題名だけでもかなり刺激的。 なにしろ、世界にその名が轟く名画「モナ・リザ」の、その表面に塗られたニスを剥がす、というストーリーなのですから。 そう聞いただけでも、とんでもないこと、と言ってしまいそうです。 ルーヴル美術館の新館長であるダフネは、これまでのような学芸員ではなく、元渉外担当ディレクター。そのため最大の関心事は来館者数を増やし増収を図ること。 そのための有効策として絵画部門の責任者であるオレリアンに命じたのは、古くなった緑がかってしまった「モナ・リザ」のニスを剥がして本来の色にするという修復作業の実施。それにより世間の注目を集めよう、という魂胆。 本心では修復に反対のオレリアンですが、やむなく修復師探し。反対意見、プレッシャーによる辞退もあり、最終的に決まったのはイタリア人の伝説的修復師=ガエタニ・カザーニ。 そしていよいよ修復作業が開始されますが・・・。 多数の細かい章が積み重ねられて一つのストーリーを形作っていくところは、モザイク画を見るような面白さと、程良いリズムが感じられます。 それに歩調を合わせるかのように多数の人物が登場し、彼、彼女らのドラマも大小様々に語られていく展開は、修復作業に関わる人物の多さを示すかのようです。 そして最後は、スリリングどころか、心底怖くなってくる程。 修復作業における主人公はオレリアンですが、彼と対になるもう一人の主人公がオメロ。モロッコ出身のシングルマザーが早くに死去し、家政夫、執事を経て、ルーヴル美術館の清掃員となる人物。彼のストーリーへの関わり方が独特で、極めて興味深い存在です。 いずれにせよ、絵画の在り方、絵画に関わる様々な人たちの人生模様、セックス模様まで描かれるうえに、名画についての記述もあって、絵画に興味ある方にとっては圧巻というべき作品になっています。 お薦め。 ※私がルーヴル美術館で「モナ・リザ」の絵を観たのはもう45年も前ですが、その時はせいぜい4、5人が観ているという程度でしたね。 |