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●「リリアン」● ★★☆ |
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2009年06月
2009/07/23
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ロシアの寒村で暮らしていたリリアン、ユダヤ人虐殺の難を受けて両親、夫を目の前で惨殺される。幼い娘ソフィーをニワトリ小屋に逃がしたものの、事件の後その姿が消えてしまう。 ソフィーが川の中を流れていくのを見たという叔母の言葉から、リリアンは全てを諦め、従姉のいるアメリカ・NYへ渡る。 そのNYで富裕な劇場主父子の愛人となり、豊かな生活を得たのも束の間、衝撃的な事実が従妹によってもたらされます。 ソフィーが生きていて、近所の夫婦に連れられシベリアへ行ったという。 全てを投げ打ち、陸路NYからアラスカを経てシベリアを目指そうという、リリアンの壮大な旅のストーリィ。時は1924年、リリアンは未だ22歳という若く美しい女性。 NYで自分の生活を確保するため、あれこれ願望し画策していたリリアンの姿は、シベリアを目指し一人旅立った以降はもうどこにも見当たりません。 母性愛の物語とも、若い女性による遍歴あるいは冒険物語とも、一人の女性の壮大な叙事詩とも譬えられる作品ですが、実のところそんな分類には何の意味もありません。 突き放すように淡々とリリアンの軌跡のみを語っていく、本作品の文章スタイルがとても印象的。 1924年7月3日/1925年9月3日/1925年10月5日/1926年5月19日 |