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「トリック」 ★★☆ 原題:"Der Trick" 訳:浅井晶子 |
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2019年03月
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20世紀初頭のプラハ、ユダヤ人ラビを父親として生まれたモシュは母の死後、父親に反して出奔、サーカス団の奇術師に弟子入りして大奇術師“ザバティーニ”の道を歩むことになります。 一方、21世紀初頭のロサンジェルスに住む少年マックスは、離婚を決めた両親の関係を何とか修復しようと、魔法による奇蹟を求めます。 ストーリィは極めて単純。ですからとても読み易い。 少年モシュの波乱に満ちた冒険的生涯と、現代米国に住む少年らしい悩みを抱えたマックスのドラマ。 70年という隔たりはあっても、魔法に夢を託したという点で2人の少年には共通するものがあります。 しかし、2人が出会った時、ナチスによる迫害、その後の苦難という現実が2人を隔てています。 奇術師が見せる魔術とは、所詮トリックあってのもの。 しかし、そこに本当に魔法は、奇跡が生まれることはないのか。 それなりに読み応えはあっても、ストーリィ自体は平凡と言えるもの。 それを一転させるのは、思いも寄らぬ奇跡が最後に起こり、ザバティーニことモシュ、そしてマックスらがその奇跡を実際に目の当たりにすることから。 年老いて自堕落、身勝手な老人となったモシェを許し、皆が今ここに生きていることを幸せに思える、そんなストーリィ。 読了後は、こうして生きていることに奇跡を感じて、幸せな気分になれました。 |