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Bianca Bellova 1970年チェコ共和国プラハ生、プラハ経済大学卒。英語の翻訳家・通訳として活動しながら執筆活動。2009年「感傷的な小説」にて作家デビュー。17年「湖」にてマグネジア・リテラ賞ならびにEU文学賞を受賞。 |
「 湖 」 ★★ |
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2019年04月
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チェコ作家が描く現代の黙示録、EU文学賞等受賞し、世界17ヶ国で翻訳出版された作品とのこと。 しかし、一通り読み終えた段階では、率直に言ってどんな意味あるストーリィなのか、よく分かりませんでした。 主人公の少年はナミ。湖近くの村ボロスで祖父母に育てられますが、湖に漁に出た祖父は戻らず、祖母も死去。 湖はまるで人々に仇をなすようです。喉元に3本目の手がある子供が生まれる、といった具合に。それはいった何故なのか。 また、恋人をロシア兵に蹂躙されたナミは、逃げ出すようにして村を出ます。生母を探そうとして。 その後にナミが辿った道のりを称するなら、まさに彷徨。 最後、再び村に戻るナミの物語は、ヘッセ「郷愁(ペーター・カーチメント)」を彷彿させます。 ただし、ヘッセ作品が青春物語であったのに対し、ナミの旅はままならない現実と折り合うに至るまでのストーリィと感じます。 たとえ不条理なことであろうと、耐えながら生きていくしかないのでしょうか。 EU、とくに旧東欧社会ではそうなのか。 ファンタジー世界が舞台のようでありながら、決してそうではありません。またナミにしろ、ファンタジー冒険のようでありながらやはりそうではない。 現実ともファンタジーとも言えない混沌とした感覚が、何とも印象に残る作品です。 1.胚/2.幼虫/3.蛹/4.成虫 |