琵琶湖北 赤坂山・三国山
1998/6/20

目次へトップ報告文書赤坂山のブナ


【報告文書】

 湖北にあるこの山に行ってみたいと思ったのは、ネットの友人から手に入れたガイドブックが発端。大阪からは、ちと遠いが、梅雨の晴れ間に訪れてみた。咲き誇るササユリとコアジサイの花を覗き見、見事なブナ&ミズナラ林を眺め、静かな山歩きを楽しんだ。

 【日時】  平成10年6月20日(土)
 【山域】  奥琵琶湖。赤坂山(823.8m)および三国山(876.3m)。
 【コース】 マキノ高原登山口〜赤坂峠〜赤坂山〜三国山〜黒河峠登山口〜白谷
 【メンバー】単独
 【タイム】(植物観察しながらにより、一部は参考にならず)
   09:15自宅発…09:45大阪発(新快速)…10:16京都発…11:45マキノ駅発
   (バス)…11:55マキノ高原バス停着〜12:15登山口(昼食)13:00〜
   13:25調子ヶ滝方面分岐〜14:10ブナの木平14:25〜15:57赤坂峠〜
   16:06赤坂山頂上16:20〜16:55三国山方面分岐〜17:06三国山頂上17:12
   〜17:20分岐に戻る〜17:40アザラシ岩17:45〜17:56林道〜18:00再び山道へ
   〜18:05黒河峠登山口〜19:00県道出合19:05〜19:23白谷バス停
   19:28白谷バス停発…19:40?マキノ駅(駅前の店で乾杯^^;)20:35…
   22:06京都発(快速)〜23:30帰宅
 【地図】  赤坂山の自然ガイドブック(地元有志が編集されたもの)

 行くなら大阪発7:45の快速にと思いつつ、週末の土曜日は朝早く目が覚めない。起きて天候を見て、天気予報を求める。明日に順延しようかと思ったが、梅雨の晴れ間のこと、いま晴れているし、どうやら夜まで雨は降らないだろうとの予測を立て、出かけることとした。

 マキノ高原バス停からゆるゆると歩き出す。ヒバリとウグイスそれにツツドリの声がするスキー場の中を行く。晴れてポカポカと暖かい。登山口でラーメンを作り昼食。草の上で虫が交尾している。では写真でもとカメラを覗いてガーン!なんと壊れている。どうやら先週六甲に行ったとき、常ならタオルにくるんで保護しているのに、あのときタオルを忘れて直のままにした。がつんとどこかに当てた跡がある。点検すると露出計が効かない。来週は仙台近郊の船形山へ行こうとも思っているのに…。ま、仕方なしと諦める。

 ホトケノザが咲いている登山口に踏み込む。この辺り、アカマツが多い。林床にはサルトリイバラが結構葉を大きくしている。ヒガラが姿を現わす。イチモンジチョウらしき蝶も。クマイチゴを見つけて味わう。甘みが出ている。ハナニガナとシロバナニガナが咲いている。調子ヶ滝分岐では、カラ類の移動とぶつかり、しばしたたずんで双眼鏡を眺める。ヒガラとシジュウカラを確認。足元にはオオバギボウシの花。

 この道は、赤坂山自然遊歩道として整備されたものだという。ここの標識は面白い。「行き止まり」などと書かれている標識がある。赤坂山3kmのところ。地名の表示はない。ホトトギス、ジュウイチ、ツツドリの声がする。特にジュウイチは遅れを取り戻すかのようにかしましく鳴いている。ホオジロも姿を見せてくれた。

 ミズナラとカエデ類の林になって少し、ブナの木平に着く。ナツツバキの花はもう少し先のようだ。キイチゴを見つけて味見。これも甘みが出て美味しい。雲は出ているが晴れていて眺めはまあまあ。麓はよく見えるが遠望は効かない。ここまで単独と7〜8名のパーティーと行き会ったが、少ないので静かなもの。そのうちに風とともに雲が流れ始める。座った大地は暖かく感じた。

 ブナの姿が見えないではないかと思ったが、なんとこの先が圧倒的なブナ林。いわば尾根筋を歩いていて小川の流れがあるというのはブナ林の典型的な姿。水場があり、その沢沿いに道がある。ヤマアジサイも姿を見せる。この道は、第2次大戦までよく使われたと「粟柄越の石だたみ」との説明板がある。手間のかかる工事だろうが、自然に優しい道。昔の人々はよく考えたものだ。

 堰堤があり、白い一枚花びらのイワガラミ。トカゲも居る。ヤマアジサイが美しい。この辺り、コアジサイは葉っぱのみ。ミズキは実を付けている。ホオノキもある。沢筋を離れて尾根道に入ると、コアジサイの花が見えだす。ヤマボウシが赤い花を咲かせている^^;。いや、盛りを過ぎて花びらのような苞が赤みを帯びているわけ。やはりアメリカヤマボウシ(ハナミズキ)と親戚だなと思う。

 カラ類がそろそろ夕食時か、団体さんでお通り。シジュウカラ、ヒガラ、コガラ。足元ではササユリを見つける。というより見つかる。大きな花。何もない土から、すっくと茎を出し、笹のような葉っぱを付けて、その先に10cmほどの花を咲かせる。赤茶のおしべが目立つ。もう少し小さければ可憐にも思うだろうに…。この時期、アザラシ岩の向こうまで、ずっと目に付いた。

 赤坂峠は笹原。ノアザミとヤマボウシの花に彩られていた。頂上で一休み。風が強く、西からガスが起こって流れてくる。とはいえ雲は浮いている。暗くなるわけでなし、天候はこのまま維持されると読む。もうあまりゆるゆるとはしておれない。16時を回っている。先の岩の上でホオジロが囀ってくれているが、通してもらうよと歩を進める。

 ササユリの咲く尾根道を快調に降ると明王禿に出る。モアイ像のような奇岩を眺める。この辺り、花崗岩が風化作用を受けたものらしい。ロープがかけられているので敢えて覗かず。16:30ごろ通過。

 戻らずに良かった。この先、ブナとミズナラの林が続く。ウリハダカエデ、ハウチワカエデ、リョウブも混じっている。林床にはユズリハ、オオカメノキも見える。そう、何と言ってもコアジサイの花が可憐。小さな花が群がって咲く。小さな花が開く前は白っぽい。花が咲くと青っぽくなる。花びらは白いのだが雄しべの茎が青い。ササユリと同じく、アザラシ岩の向こうまで楽しませてくれた。

 分岐から三国山への道へ踏み込む。あまり通らないのか、樹林帯の細い道になる。すぐに細い水の流れがある。昨日の雨もあろうが、ブナの森は有り難いもの。頂上で一服。ときどきガスに巻かれて展望はあまり効かない。樹林があるが北面は眺められる。試しに携帯電話を出すと2本もアンテナが立っている。通話可能範囲であることが不思議^^;。

 分岐に戻り、先を急ぐが、今度は三国山湿原。そう、ブナの森が湿原を形成しているという感じ。いわば山の斜面である。そこにキンコウカが群生していて、ひとときの観察。アザラシ岩には、なんとササユリの4花。普通は、土から出た茎に一つの花。ところが4つも大きな花を付けているわけ。カメラが故障して写す気にならないから、目に焼き付ける(^_^;)。

 他に花は見られないかと暗い林床を眺めつつ歩くが、銀竜草は見つからず。完全に終わってしまっていた。今年は各地の山行報告(NIFTY SERVE FYAMATRK)で結構目に付いた。ひょっとして残っていればと期待したのだが不発。ササユリとコアジサイ、それにキンコウカが咲き乱れた道ももう終わり。根曲がりのブナたちも眺められたし、ホクホク気分で歩いていたら林道に出た。林道を少し歩いてもう一度山道に入る。と、すぐに黒河峠登山口に出た。目の前を車が・・。

 ここからは林道歩き。最悪はマキノ駅まで3時間くらい歩かねばならないかも知れないと思いつつ、まぁいいわい、ゆるりと自然観察しながら歩こう。トリアシショウマ、ヤマボウシ、ヤマアジサイの花を見つつ歩く。ホオノキは花の跡を残していた。マタタビの花?、イワガラミの花、ドクダミの花も。途中、山の清水も飲み、ひたすら歩く。四つ足動物だろう音を立てて逃げ去ったが、カモシカなら目を合わせたかったもの。

 県道出合からはリーチを生かした林道歩き。これが功を奏したか、白谷バス停で、ちょうど最終のバスに間に合い、マキノ駅へ。とにかく麦酒を飲みたいと駅前の「かぶら」という店に入る。当然、生ビールで一人乾杯。多くの花を観察できたし、きっかけとなった本を紹介してくれた友人に感謝しつつ車中の人となった。


【赤坂山のブナ】

 滋賀県・湖北の赤坂山〜三国山を楽しんできた。尾根筋を歩いているのに小川(沢)に出会うというのはブナの森の典型的な姿。昼食に、一休みに、夜のキャンプに山の清水が使えるというのは非常に有り難いこと。かつて大峰の小笹の宿や狼平はそんな贅沢ができる場所として愛用したもの。これがために自分がブナに気づき、今のハンドルがある。赤坂山から三国山は、まさにブナの森だった。

 ブナの木平から奥に入ったところ。ここは赤坂峠とその南側の稜線を源流とする水の流れが小川を作っている。しばらくこの沢沿いに進むことになる。最初の沢との出合で清水を飲む。清らかな流れから目を離し、上を見上げると鬱蒼としたブナの森だ。ヤマアジサイが咲き、彩りを付けてくれている。この流れは南下し、他の沢と合流してマキノ高原スキー場の中を流れ、やがて知内川に合流する。

 昔の人はこの古道を歩いたという。実に的確な道の作り方。昨日の大雨で少しは水かさは増えているものとは思われるが、増水して道が流されるほどではない。水をたっぷり吸い込んで、徐々に流していくブナの森。そこに沿って石畳が敷かれている。自然を生かして共存しつつ、その恩恵にも浸りながら歩ける古道。

 赤坂峠から赤坂山は一面の笹平。確かにノアザミとヤマボウシが咲き、目を楽しませてくれるが、本当のこの山のありがたさはこの先にあった。尾根筋の樹林の中を通るが、ここがまたブナ。背は伸びていないが確かにブナが育っている。ミズナラ、ウリハダカエデ、ハウチワカエデと揃っている。そう、この山は日本海型。ブナの葉は比良と同じく小さいが、植生が物語っている。この山塊にはヒメシャラは見られなかった。

 明王禿を過ぎ、両川を少し下ったトラバース道に入ると、大峰の奥駈道を歩いているような錯覚がする。いかにもカタクリが育っているような湿潤な植生。ブナとミズナラの林を歩く。そして三国山の分岐から入ったところにも水場がある。東に進み、南下し、知内川に合流する八王子側の恐らく源流がここ。そのすぐ先の三国山湿原は、湿原というよりもブナとミズナラの森が作り出した山の斜面の湿地帯。ちょうどキンコウカが咲き乱れていた。

 黒河峠手前の林道と林道の間の山道も、圧倒的なブナとミズナラの森。おかげで林道沿いも植生が豊か。沢沿いにはヤマアジサイが咲き乱れ、ヤマボウシも花を残している。ホオノキの花は過ぎていたが、それぞれの時期で楽しませてくれるだろう。街ができたからと水源確保の大工事をするのではなく、素朴に山の清水を利用する、そんな地域住民の、行政の考えがあって良いのではなかろうかと思った。


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