○茶の湯
今年4月から自由が丘は魚菜学園にある、よみうり文化センターで茶道(裏千家)を習い始めた。週に1回、月曜日の午後である。
日本料理を突き詰めていけば懐石料理、つまり茶懐石に行き着く。懐石を真に理解するには茶の湯そのものを修得しなければならない、そう感じてはいたもののサラリーマン時分にはせっかくの日曜日をつぶしたくなかったし、その気力もなかった。まして平日になど論外。今の生活を選んで初めて習い事をする余裕ができた。
茶道に興味を持つ人は意外に多いのかもしれないが、私がそうだったように勤めをもつ層には接する機会がないかもしれない。さらに、男性にとっては他の多くの”お稽古事”がそうであるように”花嫁修業”のイメージを持っていることだろう。しかし、歴史をひもとけば茶の湯は長きに渡り男性社会においてはぐくまれてきた文化だということがわかる。また、ただ単にお茶を立てて飲むという直接的な行為にとどまらない総合的な芸術である。ぜひ男性にこそ茶の湯を知ってもらいたい。
茶道を習っている時間には、普段の生活とは違う悠々とした時の流れを感じている。現代社会は生産性を高めるため、より高速に、より効率よく、と動いてきた。物質的な豊かさの裏で失ったものを感じているように思う。
基本的な作法を身につければ、後は自分の興味の方向を絞っていってもいい。陶磁器に関心があればその方面に。同様に茶室建築や庭園に、書に、花に、歌に。追求しても決して行き着くことのない奥の深いもの。まさに一生の趣味となる。ちなみに最近”灰型”というものに触れ、これもハマルな、と思った。要は炉の灰を整える行為なのだが、”大人の砂遊び”と言ったら怒られるかもしれないがとにかく無心になれる。(1997.9.13)
茶の湯の世界