○懐石

 現在にいたる懐石料理の形は利休によって侘び茶が完成された時に整えられたとされる。その名残は両端を細く削った箸を利休箸と呼ぶことにも見られる。

 懐石の基本は一汁三菜。すなわち向付(むこうづけ)、汁、煮物、焼物である。これに小吸物(箸洗い)、八寸、湯斗(ゆとう)、香の物が加わる。

 現在、割烹や日本料理屋の懐石(会席とも)料理やコース仕立てのものは、茶懐石を元に酒宴に見合うようアレンジされたものである。ちなみに、日本料理に先付けなどとも称する前菜を取り入れたのは魯山人の創意で中華料理にヒントを得たといわれている。

 

 以下に茶懐石を簡単に説明する。使用した画像は実際の茶事(初釜の茶事・1月)で出したもの。

○ご飯

○汁(合わせ味噌仕立て 菜の花 溶き辛子)

○向付(鯛の昆布締め薄作り 山葵 唐草大根)

 折敷(おしき)と呼ばれる角のお膳に盛られて出てくるのがご飯と汁、そして向付。ご飯と汁の椀(合わせて四つ椀と呼ぶ)の向こう中央に置かれるのが向付で、料理名のみならず器そのものも向付と称される。料理としては刺身が一般的だが、冬場にはふろふき大根のような温かい料理が出されることもある。刺身の場合、醤油類はあらかじめかけてある。始めからかけて出すには生醤油では濃すぎる為、柑橘果汁や出汁で割った加減酢をかける事が多い。さらに、向付の器はその後出てくる料理の取り皿として使われる。お膳が下げられるまで在ることから重要な器といえる。

 最初に盛られてくるご飯は炊きあがったばかりの”一文字ご飯(これは裏千家流で、流派によっては丸く盛る事もある)”。一しゃもじ分が盛られる。このご飯と汁を一口ずつ交互にいただく。この時にはまだ向付に箸をつけない。その後飯次で2回出る。1回目は全員が均等に取り分け、2回目は好きなだけ取る。

 汁は一般には味噌汁。夏場は赤味噌、冬場は白味噌を基調にした合わせ味噌で、季節の移り変わりで味噌の配合を変える。煮物椀が出る前と焼物が出た後に汁替えといってお替わりが持ってこられる。(通常、焼き物の後の汁替えは客が遠慮し断ることが事が多い) 

○酒

 最初のご飯と汁を食べ終わった頃、お酒が亭主から勧められる。燗鍋(かんなべ)と称する酒器と引盃(ひきはい)を使う。この時はじめて向付に箸をつける。盃は向付を左にずらしその右側に置く。その後最初の飯次、汁替え。

○煮物(煮物椀)(海老しんじょ 春菊 しめじ 色紙大根 色紙人参 松葉柚子)

 ”日本料理の花”と言われるのがこの煮物椀。その後2献目のお酒。

○焼物(銀だら西京漬)器:黄瀬戸銅鑼鉢(自作)

 焼物以外の揚げ物、蒸し物などでもいい。その後2回目の飯次。

○強肴(しいざかな)(進肴、預け鉢とも言う)(ふろふき大根 牡蠣 きぬさや・白和え)

 本来の一汁三菜からははずれるが、客にお酒をすすめる上で1,2品加える事がある。亭主は預け徳利(大振りの徳利)と石杯(せきはい、ぐい呑みの事)を出し、自らは水屋で相伴する。

○小吸物(箸洗い)(姫竹 梅肉)

 八寸の前に口を清めるためのもの。具はごく少量、昆布出汁にあるかないか程度の塩味をつける。

○八寸(初釜の趣向で3種盛りに 数の子 筏ばえ(一般的には田作り) たたき牛蒡) 

 八寸角の木地の器に海のもの(動物性)、山のもの(植物性)を盛って出す。海のものを手前に盛りつける(裏千家流)。亭主は八寸を小吸物の蓋に取り分けながら客と盃を酌み交わす。これが”千鳥の盃”と呼ぶもの。始めに海のもの、一巡したのち山のものを取り分ける。

 ※木地の器は水で湿らせてから使う。箸も同様。

○香の物

 2、3種類を盛り合わせて出す。沢庵のようなものには食べやすいように隠し包丁を入れる。

○湯斗(湯桶)

 ご飯のおこげにお湯をかけたもの。一般的には米を煎ったものを粥のように煮て出すことが多い。ご飯と汁の椀にそれぞれよそって、器を香の物で洗うようにしていただく。

 

 ※茶の作法として器は懐紙等で拭き清めてから膳を下げていただく。その後主菓子をいただき中立ち(一旦茶室を出る)となるのが茶事の流れである。

○主菓子(銘:常磐の松)

 

 通常、縁高(ふちだか)と呼ばれる重ねのお盆に入れて出す。一番上が正客の分。菓子は懐紙に取ってからいただく。

 

茶の湯の世界に戻る