Travel Graphic/ASIAT0
Siga/Lake Biwa
1996/12
古くから琵琶湖をかかえる近江の国は北陸道・東海道・中山道の集まる交通の要所だった。
長い旅の途上で静かに横たわる琵琶湖をみたとき、旅人はどんなに慰められたことだろう。
今、琵琶湖の周囲はそのころと比べて一変した。
その静かな湖面は、現代の旅人の心を同じようになごませているだろうか。


琵琶湖の北、戦国時代を代表する合戦の場である賤ヶ岳の向こう側に周囲約6キロの
小さな湖がある。このあたりはかつては近江の国伊香郡(いかごおり)とよばれていた。
「伊香の小江(このえ)」とよばれていた小さな湖はいまは”余呉湖”と呼ばれている。
昭和35年まで湖畔を一周する道路ができるまで、浦々の交通はみな舟だった。


余呉湖にこんな羽衣伝説が残っている。
養老の昔、この土地に伊香刀美という男がいて、あるとき湖のそばで水浴している
八羽の白鳥をみた。近づくと天女であり、彼はおどろきまたその一人に恋をした。
そしてひそかに天の羽衣を白い犬に盗ませる。姉7人は天に飛びかえったが、
その娘は刀美と夫婦となり、子どもを産んだ。
ところがある日、刀美がかくしていた羽衣を
みつけた彼女はそれをきて天に帰ってしまう・・・・・・・・
だれもいない湖畔で静かな湖を見ていると、残された刀美が向こうの岸で同じ湖面を見ている
ような気がしてくる。
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