Travel Graphic/ASIAT0
Siga/Lake Biwa2
1996/12
近江長浜に城を築き、木下藤吉郎が一国一城の主となったのは、天正2年(1574年)。
はじめて天守閣から琵琶湖に沈む美しい夕日を見たとき、彼は何を想っただろう。
同じ真っ赤に沈むその年の日の入りを僕は長浜のホテルの露天風呂から眺めていた。
天下人でない平凡な僕は、去りゆく年のいろいろな出来事と新しい年のことを
ぼんやり考えていた。
近江を代表する武将に浅井長政がいる。
織田信長は岐阜からでて京都を押さえようとしたが、途中に長政の治める近江がある。
信長は浅井氏と通婚することにより安全を得ようとし、妹お市を長政の嫁にした。
ところがその後、信長が浅井氏とは古くから友好関係にあった越前の朝倉氏を攻めることより、
情勢は一変し、長政は「朝倉氏をうらぎることはできない」と、織田に反旗を翻し、ついには滅んでしまう。
長政が決意を固めたときと同じ湖面に今日も風が吹いている。
昨年、僕の好きな作家の一人が天へ旅立った。
司馬遼太郎さんの長い旅 ”街道をゆく”は次のような文章ではじまっている。

「近江」
というこのあわあわとした国名を口ずさむだけでもう、私には詩がはじまっているほど、
この国が好きである。
京や大和がモダン墓地のようなコンクリートの風景にコチコチに固められつつあるいま、
近江の国はなお、雨の日は雨のふるさとであり、粉雪の降る日は川や湖までが粉雪のふるさとで
あるよう、においをのこしている。
「近江から始めましょう」・・・

参考文献 「司馬遼太郎の遺産 街道をゆく」
(週間朝日別冊)
「街道をゆく 4」北国街道とその脇街道
(司馬遼太郎)

国内編へ戻る
TOPへ戻る
Copyright (c) Ko Ito