こまったちゃん新聞 現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし>ここ!


究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道

もくじ


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


1 成原博士

 東京都練馬区諫坂町――環状七号線と西武池袋線の交差するあたりにその町はあった。一軒一軒は個性的なはずなのに、全体を見ると画一的に見える街並み。まるでフラクタル図形のような景観が広がっていた。東京の住宅地にはよくある景色である。
 その一角に街並みの調和を破る家が建っていた。玄関のある表側はありきたりの二階建て。しかし、裏に回ると蔦の這う石塀に囲まれた古びた建物があった。
 門には木製の大きな看板が掛けてある。看板には「成原万能科学研究所」と墨書きされていた。
 時は深夜、外は梅雨明け直後の蒸し暑い空気が澱んでいた。研究所から変圧器の低くうなる音、火花のはじける音、モーターの回転音がかすかに漏れていた。
 研究所の主、成原成行博士は、その一室で訳の分からない装置を操作していた。幾条ものケーブルの先には、廃品を組み立てて作ったレイバーが繋がっていた。
 レイバーとは多足歩行式大型マニピュレータのことである。二から四脚と多くの場合一対の作業肢を有し、搭乗員が作業肢を操作する。細かい作業と重量物を扱えるという相反する機能を同時に実現したため、すでに数年前から土木・建築分野を中心に急速に普及していた。
 一方、過酷な使用環境からスクラップになるレイバーも少なくなく、レイバーの普及に伴って廃レイバーの不法投棄も目立つようになってきた。成原博士は、こうした廃品を拾い集めていた。
「うーむ、結構結構。近頃はおもしろいものが出回っていて、非常に喜ばしい限りである。がらくたの中にも探せば使える部品はあるものだ。こいつを組み立てて究極のレイバーを作り、世界を征服してわたしを笑いものにした学会に復讐してやるんだぁぁぁぁ!!」
 成原博士の高笑いが研究室の中に響いた。レイバーのシルエットは重心を低くするために脚を短くしていることを除くと、来年に導入される次期警察用レイバー「AV98−イングラム」によく似ていたのだが、そんなことは当の成原博士に知る由はなかった。


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


2 あ〜る

 土曜日の朝。青い空に夏の太陽が南中を目指して昇り続けていた。
 フラクタルな街並みの中に、また、どこにでもありそうな木造モルタル二階建てのアパート。その鉄製の階段を軽やかに駆け上がっていく足音があった。
 足音の主は大戸島さんご。練馬区役所に勤めて早十年。二十八歳になるというのに童顔のせいか、短く切った髪のせいか、それとも独身でいるせいか、五歳は若く見えた。
 さんごは、二階のある一室のドアを開けた。
「こんにちは、あ〜るくん」
「あ〜るくん」と呼ばれたのは、R・田中一郎である。あ〜るは、妹のR・デコとこのアパートに住んでいた。さんごが訪ねてきたとき、ふたりは六畳の居間でちゃぶ台を挟んでご飯を食べていた。
「やあ、さんごじゃありませんか」
「はい、あ〜るくん、差し入れだよ」
「これはお米じゃないですか。しかも魚沼産コシヒカリ十キログラム」
「重かったんだよ」
「お礼にご飯をごちそうしましょう、おかずはありませんが……」
「……うーん、おかずがないんじゃあ食べにくいわね。」
「そうですか、それは残念です」
 さんごはちゃぶ台にほおづえをついて、あ〜るが食事しているところを見ていた。
 あ〜るがこのアパートに住んで十年になる。あ〜るは、十二年前に成原博士によって作られたアンドロイドである。エネルギー源はご飯であり、米から作られた物以外はいっさい受け付けない。
 成原博士は世界征服を行うためにあ〜るを製作したのだが、当のあ〜るは、あまりにも人間くさくまぬけなアンドロイドであったため、世界征服とはまるで縁がなかった。そこで成原博士は、二年後に妹分のデコを製作し、あ〜るやさんごの母校である春風高校を乗っ取ろうとしたのだった。
 あ〜るは、どうにか成原博士の野望を阻止することに成功したが、自分の父である成原博士に逆らったことを後ろめたく思い、以来、実家である成原万能科学研究所から離れて暮らしているのだった。
「あれから十年経つのねぇ」
 あ〜るがご飯を食べているところを見ながらさんごが言った。
「何からですか?」
 あ〜るは、思い出せないでいた。食事中に突然「あれから」と言われてもいったい何を指しているのか普通はわからない。デコが話を継いだ。
「お父様が世界征服を目論んで春風高校を占拠した事件のことよ、お兄様」
 デコにとって「十年前」といえば、この「成原騒動」しか思い当たらない。デコはこの騒動の直前に誕生したので、さんごが何のことを言ったのかすぐにわかったのだった。
「あ、そういうこともありましたね。春風高校にいた頃はいろんなことがありましたから、『十年前』と言われても、何のことかすぐにはわからなくて……」
「そりゃそうよね」
 さんごは納得した。
「ねぇ、あ〜るくんは、『忘れる』ということがあるの?」
「ぼくは『忘れる』ということはないですよ。『思い出せない』ということはよくありますけどね」
「おんなじことじゃない!!」
「でも、頭のどこかに過去の記憶は全て残っていますよ」
「それじゃ、ある日突然記憶がいっぱいになって、これ以上覚えられないということになるのかな?」
「そうかも知れないですねぇ」
「ずいぶん、のんきねぇ……。でも記憶がいっぱいになったら、いらない記憶は消してもらうことになるの?」
「お父さんに、ですか? うーん、困りましたねぇ。ぼくには誤って消してしまっては忍びない記憶もたくさんあるのです」
 あ〜るはかつて春風高校に通っていた頃、光画部に在籍していた頃のことを思い出していた。


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


3 メカ成原

 ちょうど、成原博士が自分の研究所で高笑いしていた頃だった。
 練馬区内のどこかの原っぱに廃材を寄せ集めて作った堀っ立て小屋が建っていた。その中にいたのは成原博士そっくりの、ただし、四本の腕と背中から伸びる十本の細いマニピュレータを持ったアンドロイドだった。
 メカ成原である。
 メカ成原は、その一室で訳の分からない装置を操作していた。幾条ものケーブルの先には、中古品を組み立てて作ったレイバーが繋がっている。
「近頃はおもしろいものが出回っているな。これで、世界を征服し、わたしを笑いものにした成原一号に復讐してやるんだぁぁぁぁ!!」
 メカ成原の高笑いが研究室の中に響いた。レイバーのシルエットは重心を低くするために脚を短くしてある点を除けば、来年、次期警察用レイバー「AV98−イングラム」と格闘することになる「グリフォン」によく似ていたのだが、そんなことは当のメカ成原博士に知る由はなかった。
 メカ成原は成原博士が世界征服のためにR・デコと同時に作り出したアンドロイドである。
 もともとメカ成原は成原博士が自分の優秀な助手にするために自分自身と同等の能力を持つものとして製作されたが、メカ成原はあっさりと造反し、成原博士に成り代わり世界を征服しようとした。
 しかし、メカ成原の野望はあ〜るの懸命の活躍により阻止された。メカ成原はいずこともなく飛び去って行ったままになっていた。
 当時の騒動があまりにばかばかしい事件だったために、メカ成原の行方を追求する者はなかった。


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


4 椎子

「こんにちはー、しいちゃんいるー?」
 諫坂駅前商店街にある写真店「ぴくち屋」は、椎子の家である。店のカウンターでさんごが話しかけた男性は椎子の夫である。精悍な面立ちは、学生時代にカメラを担いで山の風景を撮影していた頃からあまり変わっていなかった。
「やぁ、さんごちゃん、いらっしゃい。椎子なら奥にいるよ。どうぞ上がっていって」
「おじゃましまーす」
 椎子は居間で、長男の岳人(たけと)と遊んでいた。
 椎子は春風高校卒業後日本大学芸術学部に進学し、写真について本格的に勉強した。大学卒業後は出版社に就職し雑誌の編集をやったいた。結婚して長男が誕生したのを契機に退職した。最近は電子スティルカメラを入手し、ありあまる暇とOL時代に身につけた編集のノウハウを駆使してインターネット上に自分のホームページを開設した。このホームページは人気が高く、店の売り上げにも相当貢献しているようである。
「わあ、岳人くん、歩くんだぁ」
「もう二歳だもの、あたりまえよ。それより、さんごは結婚しないの? いい加減歳なんだし……」
「わぁー、うちの親と同じこと言ってるぅ」
「誰だって言うわよ。言われなくなったら、それこそおしまいだわ」
「だいたい、いい男っていないのよね。なんか、どいつもこいつも似たようなのばかりでさ。面白みに欠けるって言うのかな、意外性がないのよね」
「さんごの好みのタイプって……」
「ちょっと変かなぁ?」
「『ちょっと』の範疇(はんちゅう)を超えているわよ。もう少し、現実を見なきゃ」
「でも、全然ときめかないのよねぇ」
 さんごはほおづえをついて窓の外を見ていた。夏の青い空が広がっていた。
「さんご、きょうもあ〜るくんのところへ行っていたでしょ?」
 ぼうっと窓の外を見ていたさんごに椎子が話しかけた。
「えっ、どうしてわかるの?」
「やっぱりね。ちょっと鎌を掛けてみただけ。たまには人間の男にも目を向けなきゃダメよ」
 そう言うと椎子はいたずらっぽく笑った。しかし、次のさんごの質問に、椎子は一瞬硬直してしまった。
「しいちゃん、『人間』って、なに?」
「え!?」
「……ねぇ、しいちゃん、高二のときの光画部部室攻防戦を覚えてる?」
「もちろんだわ。鳥坂センパイたら、勝ち目がないのに生徒会と対戦しちゃうんだもの。わたしが何もしなきゃ、あのときに光画部はなくなっていたわ」
「敵も味方も欺いてね」
「……さんごの言い方、なんだかトゲがあるわね」
「ううん。あのときのしいちゃんには感謝している。おかげで今も光画部は存続しているんだもの。でね、あのとき――しいちゃんが光画部をやめるって言い出したとき、あ〜るくん、泣いていたんだよ」
「あ〜るくんが!? だって、あの子ロボットでしょ?」
 椎子にはとても信じられなかった。あ〜るが泣いたという話は、十年目にして初めて聞いたのだった。
「ロボットじゃないよ、アンドロイドだよ。あ〜るくんは、とても寂しがりやなんだよ。だから、そばにいてあげないと……」
 椎子はさんごを見つめていた。椎子が「きっとこの子は……」と思ったそのとき、町中に「声」が響いてきた。
「ご町内のみなさま、けだるい午後のひととき、いかがお過ごしでしょうか。毎度おなじみマッドサイエンティストの……」
 ふたりは声をそろえて叫んだ。
「成原博士だ!!」


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


5 ふたたび成原博士

「しいちゃんっ、行ってみよう!」
「さんご、ちょっと待って」
 椎子は立ち上がるさんごを少し待たせると、隣の部屋からカメラバッグを持ってきた。
「岳人くん、おかあさん、ちょっと出かけてくるけど、いい子にしてるのよ。けんちゃん、お店の方お願いね」
 町内に成原博士の声が響いている。
「十年の長きにわたり、耐え難きを耐え忍び難きを忍んで参りました。雌伏の間、ご町内のみなさまには多大なご心配をおかけしたことと思いますが……」
 さんごと椎子は住宅地の路地を声の方に向かって走った。
「世界征服の野望が潰(つい)え去ったわけではありません!!」
 さんごと椎子は走りながら苦笑した。
「全然変わっていないわねぇ……」
 「それ」は春風高校の校門からもよく見えた。さんごと椎子は校門の前で、校舎の屋上にそびえ立った奇怪なオブジェを見上げた。
「なんか懐かしい物を作ったわね。ねぇ、しいちゃん。」
「ずいぶんのんきなことを言っているわね。あのとき、さんごは拉致されたんじゃないの」
 椎子はバッグからカメラを取り出すと、ファインダーを覗きながら答えた。
 ふたりが校庭の方へ行ってみると、すでに、たわば、鳥坂・郷子夫妻、兵藤、曲垣、千里が来ていた。校庭から校舎の方を見ると、なんだかわからない奇怪なオブジェは屋上の両端に一つずつあるのがわかった。校門に近い側のオブジェは、十年前に見た物とよく似たものだったが、もう片方の端にあるオブジェは木の形をしており、いくつも出ている枝の先には顔がついている奇妙な物だった。
「鳥坂センパイ! 来ていたんですか?」
「さんごに椎子ではないか。母校の危機だ、たうぜんである」
 鳥坂は右手の中指を突き立てる「いつものポーズ」で答えた。
「センパイ、あれ……ふたつもあるんですか?」
「そうなんだ。だが、成原博士がふたつも作る必要が……」
 鳥坂が言いかけたとき、春高の屋上にメカ成原が現れた。
「わたしが世界征服をするのだ。わたしこそ世界征服のために生まれてきたのだ!!」
 メカ成原が成原博士に挑みかかろうとしたとき、成原博士が叫んだ。
「いでよ、新メカ成原っ!」
 成原博士に似たアンドロイドが現れた。
「どうだ、今度はわたしを凌駕しない程度の能力しかないから、逆らう心配もないっ。」
「わっはっはっは、堕ちたな、成原一号! 性能の劣るメカを作ってどうしようというのだ。わたしの優秀助手、新成原一号はそんなへぼではないぞ!」
 校舎の屋上で四つの成原博士の顔が二対二に分かれてにらみ合っていた。
 椎子は、屋上の様子を写真に撮っていた。曲垣が尋ねた。
「椎子センパイ、何やってるんですか?」
「へへへ、ディジタルカメラ。わたしのホームページに載せるのよ」
「なんか、役に立つんですかぁ?」
「そんなこと、判らないわ」
 千里は、ディジタルハンディカムを構えながら、椎子と曲垣の会話を聞いていた。
「椎子センパイのホームページならわたしもよく見るわ。椎子センパイって、結婚前は雑誌の編集をしていたでしょ。だから、レイアウトも見やすいし、写真もきれいなのよね。……あら、助手のロボットが引っ込んじゃったわ」
「……明日午前九時から世界征服に取りかかります」
 成原博士とメカ成原の間でどう話し合いがついたのか、続きは翌朝ということになったようだ。
「今日はこれでおしまいだな。続きは明日だ」
 成り行きをひととおり見届けた鳥坂がそういいかけたとき、あ〜るが自転車 「轟天号」をこぎながらやって来た。
「あれ、もう終わったんですか?」
「このスカタン!」
 鳥坂はあ〜るをハリセンで思いっきりはたいた。
「今頃やって来てどうするつもりだ? 今日はもうよいから、明日七時に集合だ」


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


6 小夜子

「ちょっと早すぎたかしら」
 小夜子が春風高校に到着したのは、朝八時を少し過ぎたところだった。校庭には千里がいて、ディジタルビデオカメラを三脚に備え付けていた。傍(かたわ)らに置かれたバッグの上には、ディジタルハンディカムが乗っていた。
「小夜子先輩、おはようございます。なんか、朝七時集合というのに誰も来ないんですよ」
「『七時集合』って鳥坂さんが言ったんでしょ? だったら、それは『光画部時間で』ってことよ」
「あっ、そうか、そうよね。『光画部時間は世界の常識』なのよね」
「そうそう」
 千里は、決められた時間に前後二時間の幅を取る『光画部時間』のことを久しぶりに思い出した。
「小夜子先輩は、今、飯能にお住まいなんですよね?どうして、春高に来たんですか?」
「鳥坂さんに呼び出されたのよ、『朝七時に集合だ』って」
「お子さんはどうしたんですか?」
「旦那に任せた」
 千里が自前のビデオカメラの調整を終えたのは午前八時半を少し過ぎた頃だった。すぐにでも何か起こるのではないかと、ファインダー越しに屋上を見ていた。望遠レンズを通した見た校舎の屋上は手に取るようによくわかったが、成原博士とメカ成原はなかなか動かなかった。
「まだ、始まらないのかなー。こっちはいつでもオーケーなのに」
 千里は腕時計とファインダーを交互に覗きながら待ちかまえていた。
 九時が近づくにつれて、光画部OBの面々が揃ってきた。鳥坂に至っては、家族四人総出でやって来た。あ〜るも「轟天号」で現れた  鳥坂が腕時計を見ながらうなずいていた。
「うーむ、よしよし。定刻通りだな」
 午前九時ちょうど。どこかの家のラジオから、時報の「ポーン」という音が聞こえて来たのと同時に、成原博士とメカ成原がそれぞれの『要塞』から姿を現し、ハンドマイクでアジテーションを始めた。
「メカ成原め、わたしの偽物の分際で世界征服を先取りしようとは、けしからんやつめ! わたしが成敗してくれる」
「わはははは。何を言うか、成原一号! きさまとは頭脳が同等らしいが、そうなら腕の数が多いわたしの勝ちだと、十年前も言っただろう!!」
 屋上の様子を椎子はあきれ顔で見上げていた。
「いい歳して、まるで子どものけんかねー」
 両成原が「目にもの見せてやる」と言って『要塞』に戻ると、双方から大量の狂戦士が現れ校舎の屋上で乱闘を始めた。
 狂戦士はあり合わせの材料で作られているようで、お互いにすぐに損傷を受けては、仲間に担がれて後方へ運ばれ、修理されては再び戦線に投入されるということを繰り返していた。
「ふーん……」
「小夜子、ずいぶん熱心に見てるな。金儲けのネタでも考えているのか?」
 鳥坂が屋上を凝視している小夜子に気がついて尋ねた。
「『狂戦士』を生け捕りにできれば、一体三万円ぐらいで売れるんじゃないかしら?」
「うーむ、相変わらずだな」
 鳥坂は、妙な感心のしかたをしていた。
 千里は喜々としながらビデオをまわしていたが、やがて、少し心配になってきた。
「あのまま乱闘を続けていて、校舎が保つのかなぁ?」
 あ〜るも屋上を凝視していた。表情にはどこか不安げな雰囲気があった。
「ああっ、お父さん、なんてことを始めてしまったんだ」
 突然、あ〜るは、頭を抱えるとその場に倒れてしまった。
「どうしたの!? あ〜るくんっ!」
 さんごが慌ててあ〜るを抱き起こした。


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


7 鳥坂

「あ〜るくん、大丈夫?」
 さんごが声をかけると、あ〜るは、ようやく上体を起こして座り直した。
「うーむ、急に立っていることができなくなってしまった……」
 あ〜るは、腕組みをして考え込んだ。

 鳥坂は、校舎の屋上で成原博士の狂戦士とメカ成原の狂戦士が入り乱れて格闘をしている様子を見上げていた。
「ふっふっふっ、わたしに対する挑戦だな。よかろう、かかって来なさい」
「そんなことよりセンパイ、十年前とは違って今回はこちらにも戦力があることだし、作戦を立てた方がいいんじゃない?」
 郷子は鳥坂より五歳年上の姉(あね)さん女房になるのだが、鳥坂のことを「センパイ」と呼んでいた。
 郷子が初めて春風高校にやってきたのは十年前の成原騒動のときだった。
 郷子と春風高校の関わりは、その前年の修学旅行であ〜るのクラスを引率したことに始まる。このとき、郷子はあ〜ると意気投合し、あ〜るが翌年も修学旅行に行くと約束したのの、その約束を果たさなかったので怒って逆に春風高校に乗り込んできたのだが、そのとき、春風高校は成原騒動の真っ最中だった。郷子は鳥坂らとともに成原博士の繰り出す狂戦士に対抗したのだった。

 「作戦か? よし、今回も助手のロボットを用意しているということは、破壊された狂戦士が再生産されてくるのに違いない。曲垣と荒又は、わたしの家族と一緒に戦うのだ。あさの、きしだ、まこととベンジャミンは、破壊した狂戦士をなるべく遠くへ運び出すのだ」
「レオナルドだ」
 ベンジャミンと呼ばれたレオナルド根岸が抗弁した。
「鳥坂センパイ」
 荒又が尋ねた。
「このお嬢ちゃんたちも戦うんですか?」
「真愛(まあい)と輝愛(きあい)が戦うと何か問題があるのか?」
「え? だって小学校へ行くか行かないかというような子どもですよ。危ないじゃないですか」
「わたしの娘を侮ってはいけない。諫坂町史上最強の子どもだ」
 傍らで郷子も笑っていた。
「そうだ。輝愛、このお兄ちゃんに見せてあげなさい」
 次女の輝愛は「うん」とうなずくと荒又の腿に回し蹴りを入れた。四歳の女の子には、腿以上の高さには届かないのだ。
「うわぁっ、痛てっ!! なんで、こんなに重い蹴りが出せるんだ?」

 鳥坂の家族と曲垣、荒又の六人は、校舎に向かって行くと、次々と現れる狂戦士をスクラップにしていった。動きの止まった狂戦士は、曲垣が外に投げ出すと後方のあさのときしだ、レオナルドが校庭の真ん中まで運んでいった。

「おや、いつの間にか狂戦士たちが減ってきたな」
 『要塞』の中で成原博士は、不思議そうにつぶやいた。
「まあ、よい。奥の手を出してやるか。こいつを運び込むために一晩時間稼ぎをしたのだ」
 どうやら、メカ成原の方でも同じことを考えていたようだった。
 双方の『要塞』の中でモーターの回転音がしたかと思うとだんだんその音が高くなり、やがて、張りぼての要塞の一部を破って成原博士の搭乗する白いレイバーとメカ成原の搭乗する黒いレイバーが現れた。
「うむむむ、わたしに対する挑戦だな。かかってきなさい」
「ちょっとセンパイ、いくら何でも真愛と輝愛にレイバーの相手は無理よ。いったん子どもたちを安全な場所に連れて行きましょう」
 レイバーに立ち向かおうとする鳥坂を郷子が牽制した。


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


8 千里

 千里は、ディジタルハンディカムを構え、屋上で繰り広げられるレイバー戦を撮り続けていた。ファインダー越しに見える二体のレイバーにすっかり魅了されていた。
「こ…これは…趣味の世界ですねぇ……」
 後ろから曲垣が言った。
「とか言いながら、本気で気に入ってない?」
 千里は目を輝かせたまま答えた。
「わかります? わたしね、十年前の成原騒動のときはたまたま風邪で学校を休んでいたから、あれが見られなかったの。悔しかったわー。でも、今日はばっちり。レイバー同志の格闘まで見られるなんて、幸運だわ」
 千里は二台のビデオカメラを前に満足げだった。
 しかしレイバー戦の方は、よく見ると成原博士が一方的に押されていた。メカ成原のレイバーはまるで生き物のように自在に動いているのに対して、成原博士のレイバーはどう見てもぎこちないのだった。
 千里はファインダーから目を離すとため息をついた。
「あー、なんかだめねー。成原博士にもがんばってもらわないと、いい絵が撮れないじゃないの」
「おいおい、千里。いったい、何しに来たんだ?」
 曲垣の問いかけに千里は至極当然といったように答えた。
「取材よ、取材。本物のレイバー同志の格闘が研究できれば、特撮にもリアリティが出るというものよ」
 国枝千里は特撮スタジオに勤めていた。
 光画部に入部したての頃は合成写真ばかりを焼いて小夜子らに呆れられていたのだが、二年生になると広い部室の一角にミニチュアセットを作り、映画研究部と共同で特撮映画を制作したりしていた。その後も特撮に対する興味は尽きず、とうとう今では、子供向けの特撮ドラマを作るまでになったのだった。

「わはははは。どうした、成原一号。そろそろ、本気でやらないかね?」
 メカ成原は言うが早いか、ぎくしゃくと逃げ回る成原博士のレイバーの腕をあっさりと捕らえて抱きかかえると、そのまま三、四回、激しく上下に振った。成原博士のレイバーが動かなくなった。
 メカ成原のレイバーが成原博士のレイバーのコックピットをこじ開けると、中からたんこぶだらけの成原博士が出てきた。
「わはははは。どうだ、成原一号め、思い知ったか。メカを操るなら、メカであるわたしの方が一枚上手なのだ」
 メカ成原は、レイバーのコックピットで高笑いしていた。メカ成原の後頭部からは無数のケーブルが延びており、レイバーに直結していた。メカ成原は自分のレイバーを文字通り自分の体のように動かすことができたのだった。
「えーい、覚えてろーっ!!」
 成原博士は、自分のレイバーから降りると泣きながら町の中へ遁走していった。

 成原博士がどこかへいなくなってしまうと、あ〜るが立ち上がった。
「うーむ、結局わたしが何とかしないとこの騒動は収まらないようだな。やはり血塗られた道か……」
 あ〜るはそう言い残すと、昇降口へ消えていった。
「ちょ、ちょっと、あ〜るくん、待ってよ。ついさっきまで立てなかったのに大丈夫なの?」
 あ〜るを追いかけて、さんごも昇降口へ入っていった。


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


9 郷子

「あ、さんごさんっ、待って!」
 さんごが校舎に入っていくのを目撃したのは郷子だけだった。
「センパイ、さんごさんが……」
 郷子が振り返ったとき、鳥坂は生き残りの狂戦士の相手をしていた。
「郷子さん、こいつら以外としぶとくて、なかなか倒れてくれないのだ」
 まだ数体の狂戦士に混じって新メカ成原や新成原一号が鳥坂や曲垣と戦っていた。
「……わかったわ。わたしが、さんごさんを連れ戻しに行って来ますっ」
 郷子は、そう言い残すと校舎の中に入っていった。

 校舎の中は、天井から絶え間なく埃が降ってきており、ときおり蛍光灯や化粧板が外れて落ちてきていた。
 「なんか、とても危ないわね……」
 郷子は手近に落ちていた板切れを頭上にかざすと、さんごの名を呼びながら一階ずつ上っていった。
 最上階の四階は屋上の直下に当たるため廊下は瓦礫が積もっており足の踏み場のない状態になっていた。郷子はここでようやくさんごの姿を見つけることができた。

 さんごは泣きながら、あ〜るの腕を引いていた。
「あ〜るくん、お願い、逃げて」
「それはできません。ぼくがここでメカ成原をくい止めなければ、メカ成原を作ったお父さんは本当の悪人になってしまう」
「じゃ、あたしも残るっ! 残って一緒にメカ成原を倒すっ!!」
「さんごは残るべきではありません」
 あ〜るは振り返ると、きっぱりと言った。
 「ぼくはアンドロイドです。壊れても作り直すことができます。けど、さんごが怪我をするのは、ぼくには耐えられません」
 あ〜るはさんごの手を振りほどくと、屋上へ続く階段に向かって歩き出した。

 土煙の中から郷子がさんごの名を呼びながら現れた。
「さんごさん、早く逃げましょう。ここは危険だわ」
「でも、あ〜るくんが……」
 しかし、廊下には天井の蛍光灯や化粧盤が崩れ落ち、とても進める状態ではなかった。
「彼なら大丈夫よ、私のコブラツイストでも壊れなかったんだから」
「いやっ、あたしも……」
 郷子は、我を失いかけているさんごの頬を軽く叩いた。
「いい、さんごさん。よく聞いて」
 さんごは、涙ぐんだ目で頷いた。
「あ〜るくんは十年前の騒動でお父さんに逆らったことを気にして、未だに実家に帰れないでいるわ。彼がしたことは正しかったにも関わらずよ。きっと、あ〜るくんにとっていちばん大事なことは、『人を守ること』じゃないかしら。
 もし、今、さんごさんが怪我でもしたら、あ〜るくんは自分のせいでさんごさんを傷つけたと思うんじゃないかしら? そうしたら、あ〜るくん自身にどんな影響が出るかわからないわ。
 さんごさん、あ〜るくんのためにも安全な場所に逃げましょう」
「うん……」
 さんごは渋々うなずくと、郷子に促されながらその場を立ち去った。最後に振り返ったとき、あ〜るのシルエットが立ちこめた埃の中に消えていくのが見えた。
「あ〜るくん、帰ってきて、きっと……」
 さんごは、あ〜るの後ろ姿に祈るようにつぶやいた。


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


10 ふたたびあ〜る

 あ〜るは、成原博士が遺棄したレイバーに乗り込んだ。コックピット前面のボンネットははぎ取られてしまい、操縦席がむき出しになっていた。瓦礫の散らばった屋上にメカ成原の黒いレイバーが立っているのが直接見えた。
「R・二十八号、今度は貴様が相手か。遠慮せずにかかってこい」
 メカ成原が挑発していた。
 それからあ〜るは手元に目線を落とした。
「これが、お父さんの作ったレイバー……」
 あ〜るはしばらくコンソールを見つめていたが、やがてパネルの下からケーブルの束をつかみ出すと自分の学生服の胸元に突っ込んだ。
「十年経っても、基本的な設計は変わっていないみたいですねぇ」
 あ〜るの『運動神経』は、レイバーに直結した。

 白いレイバーが動き出した。腕で上体を起こすと、片膝を立て、ゆっくりと立ち上がった。
「お父さんをいじめるおまえなんか許さないぞ」
「R・二十八号、許さなければどうするというのだ?」
「ぼくが……倒す!」
「おもしろい。やれるものならやってみろ」
 あ〜るは、目の前に立ちふさがるメカ成原のレイバーを見つめながら考えていた。
「とうさんのレイバーは、すでにダメージを受けている。まともにぶつかっても勝てないだろう。最高にうまくいっても相討ち……ならば、まず、逃がさないことだ!」
 あ〜るのレイバーは、手近に打ち込まれていたワイヤーをペグごと引き抜いた。ワイヤーは、成原博士の要塞を支えていた支索だった。あ〜るの乗ったレイバーの後ろで成原博士の要塞が崩れていった。
 メカ成原が叫んだ。
「そっちから来ないなら、こっちから行ってやるぞ!」
 黒いレイバーが突進してきた。白いレイバーは、一歩下がって上体を反らし、黒いレイバーの直撃をさけると同時にワイヤーを相手に巻き付けていた。
 あ〜るは、ペグを自分のレイバーの腰に打ち込みながら言った。
「どうだ、これなら逃げられないぞ」
「誰が逃げなきゃならんのだ?」
「えーと……、あれ?」
 メカ成原の反論に、あ〜るは一瞬たじろいだが、すぐに気を取り直した。
「それはともかく、ぼくはおまえを許さないぞ!」
「だから、許さなければどうするのだと、訊いておるのだ!」
 黒いレイバーの腕がコックピットを狙って何度もつかみかかってきた。あ〜るは上体を反らしながら紙一重のところで、その攻撃をやり過ごしていた。
「今の速度、覚えましたよ」
 あ〜るはつぶやいた。
「ほほぅ、よくかわしたな。だが、今度でとどめだ」
 黒いレイバーが再び突進してきた。あ〜るは、眼前に迫る黒い影を見極めるとしゃがみ込んで相手の股間に右腕を差し入れ、相手の勢いを利用して持ち上げると、そのまま、黒いレイバーを頭からメカ成原の要塞にたたきつけた。
 次の瞬間、メカ成原の要塞は崩壊し、二機のレイバーも瓦礫の中へ埋もれてしまった。

 屋上で動くものは、なくなった――。


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


11 たわば

 数時間後――。
 屋上は、成原博士とメカ成原の要塞の残骸が散らばっていて足の踏み場がないほどになっていた。
 たわばが非常階段を上って屋上へ来たとき、鳥坂は屋上のフェンスにもたれかかってぼんやりと諫坂町の街並みを見ていた。
 空には大きな夕日がかかっていた。
 たわばは、鳥坂の隣に来ると同じようにフェンスに寄りかかった。
 鳥坂がつぶやいた。
「まだ沈まずや、定遠は……」
「なんだ、そりゃ?」
「いや、なんとなく……」
 たわばの問いかけに、鳥坂は夕日を眺めたまま答えた。
 たわばも夕日を眺めながら言った。
「なぁ、鳥坂。おれは、あ〜るのやつがどこかで生きているような気がするんだ」
 しかし、隣に立っているはずの鳥坂からは返事がなかった。
「おい、鳥坂、どうした?」
 たわばが鳥坂の方を振り向くと、鳥坂の体はフェンスにもたれながらずるずると滑り、床の上で大の字になった。
「なんだ、寝ているのか……」
 鳥坂のぽかんと開いた口の中に、真夏の日差しが差し込んでいた。
「?」
 鳥坂の足元に何かある。「それ」に気がついたたわばがしゃがみ込んで見た。
 それは、ひしゃげたメカ成原の頭部だった。


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


12 さんご

 椎子は、さんごを心配していた。自宅に電話をかけても留守番電話が応対するだけであり、区役所の方に電話しても「風邪で休んでいる」との返事だった。
 それから二日が経った。
 その日は店が定休日だったので、椎子はさんごを探しに出た。

 さんごは宇南山公園やしゃヶ池のほとりでうずくまっていた。後ろから椎子がやって来た。
「さんご、どこへ行っていたのかと思ったら……」
「しいちゃん……」
 振り返るさんごの目が赤く腫れていた。
「さんご……どうしたの?」
 さんごは訴えかけるように言った。
「あ〜るくん、帰ってくるよね? ね? ね?」
「さんご、あ〜るくんはもう……帰ってこないと思うの、激しい戦いだったし。それに、さんごのためにも……」
「しいちゃん、悲しいこと言わないで。あたし、気がついたの。高校の頃からずっとあ〜るくんを見てたことに。そして今でも……。春高を卒業して十年くらいじゃ、気持ちが変わるにはそんなに長くないんだよ……。
 あたし、あ〜るくんがいないと寂しかった。だからいつも遊びに行っていた。あたし……あたし……ずーっとあ〜るくんが……好きだったんだよぉ!」
「好き」という言葉を口にしたとたん、さんごは泣き出した。椎子は泣きじゃくるさんごを抱きしめた。
「しいちゃん、あたし、今わかった。あたし、あ〜るくんが好きなの。今まで、心のどこかで『あ〜るくんはアンドロイドなんだ』って区別していたのかも知れない。でも、あ〜るくんは人一倍やさしくて思いやりがあるんだよ。あ〜るくんが帰ってきたら、これからは、ずーっと一緒にいる。あたし、あ〜るくんについて行く。うん、決めた!」
「さんご……」
 そのとき、やしゃヶ池の水面が波立ってきた。その音に気がついたさんごと椎子は池の方を振り向いた。
「やあ」
 ずぶぬれのあ〜るが池の中に立っていた。
「どうして道に迷うとここに出てきてしまうのだろう?」
「あ〜るくん!」
 さんごと椎子は抱き合ったままものすごく驚いた。しかし、さんごはすぐに椎子の腕を振りほどくと、池の中へ駆け込んでいった。
「あ〜るくん! やっぱり無事だったのね!!」
「さんご、池に入ったら濡れてしまいますよ」
 あ〜るは駆け寄るさんごをひょいと横抱きに抱え上げたした。さんごもあ〜るの首に腕をまわした。
「もう、離れない!」

 あ〜るとさんご、椎子は、公園の遊歩道を歩いていた――はずが、いつの間にか藪の中をさまよっていた。あ〜るが困った顔をしてふたりの方を振り向いた。
「ややっ、また道に迷ってしまったではないですか」
 さんごと椎子は、やれやれという表情でお互いの顔を見合わせた。
 さんごがつぶやいた。
「早まったかしら?」

(了)


こまったちゃん新聞現在地:HomePageもくじ『じゃじゃグル』で遊んだことつくりばなし究極超人あ〜る '97 さんごの迷い道>ここ!


あとがき

 いやぁ、まいった、まいった(^_^;)ゞ。こんなに時間がかかるとは思いもよりませんでしたよ。でも、完成を待っていた人なんかいるのかなぁ?
 事の起こりは、今年初めのたいくつなある日、「春風高校の面々は今頃どうしているのかなぁ」なんて考え始めたのがきっかけでした。
 「しいちゃんとか鳥坂センパイは結婚しているんだろうな。子どももいたりして。鳥坂センパイは男の子を欲しがりそうだけど、女の子ばかりだったりして。で、子どもの名前は……真愛(まあい)と輝愛(きあい)、おっ、これははまりすぎっ。是非登場させねば。まりいはお嬢様だから、どんな暮らしぶりだか想像できないや」などとあれこれ考えているうち、「そーいや、さんごとあ〜るの関係ってどんなんだったんだろう?」と思い始めました。
 『14日の土曜日の巻』15ページ4コマ目は、自分のプレゼントしたおにぎりを食べるあ〜るくんをじっと見つめるさんご。『成原対メカ成原』では、それまで、成原博士に対して何もできなかったあ〜るが、さんごがさらわれたことをきっかけに、生みの親に戦いを挑んで行きました。
「そうか、あ〜るの中では、光画部の部員が苦戦していることも見過ごせないけど、成原博士に対抗することもできなかったんだ。それが、さんごが渦中に巻き込まれることによって、あ〜るの心理バランスが一気に、光画部の味方になり成原博士に立ち向かうように傾いたんだ、と、スーザン・カルヴィン博士なら言うのに違いない」と、こじつけて、あ〜るとさんごをくっつけるお話にしました。
 文章が拙いことは重々承知しておりますが、出来映えはいかがでしょうか? (平成九年十二月二十二日/風邪引いて寝んね)