新刊紹介

STAR TREK: KLINGON!

「クリンゴンが生まれてすぐ戦士になれるわけではない。」

と、クリンゴン帝国の指導者ガウロンは集まった宇宙艦隊の士官たちに言った。彼はナイフを取り出し、テーブルに深く突き立てた。「戦士になるには努力が必要だ。俺がこのナイフを持てるようになる前は、子供用のghojmeH tajを持っていたのだ。」

ガウロンはしばらく聴衆たちを見回した。「これは俺の友であり同志でもあるトルグンの息子、ポークの話だ。まだghojmeH tajを持った、ほんの小僧っ子だ。ポークがどうやって戦士になったかをお前らに話してやろう・・・」


【注釈】
ghojmeH taj:練習用ナイフ(learning knife)
ghoj:学ぶ、習う、教わる、練習する(learn)
-meH:〜するために/の(for 〜ing)
taj:ナイフ(knife)

この本はスタートレックの小説の最新刊です。インタラクティブCD-ROMの「STAR TREK: KLINGON!」を基にして書かれた小説版です。

クリンゴン帝国と惑星連邦の今後の協力体制について協議するために、ガウロン議長がディープ・スペース9へとやってきます。連邦側の代表ジェリコ少将を護送してきたのはエンタープライズ号です。

しかし協議は思うように進まず、これはジェリコ少将のクリンゴンに対する理解不足に原因の一つがある様に思われました。そして協議の合間に起こった宇宙艦隊士官たちとクリンゴン戦士たちの小競り合いをきっかけにして、ガウロンはクリンゴンの文化を理解するのに役立つある一つの物語を話し始めます。それはクリンゴンの少年ポークが父の死を乗り越え、大人の戦士へと成長していくという物語でした。

小説は、ガウロンが語るクリンゴンの復讐劇とDS9で起こるガウロン暗殺未遂事件との二重構成になっていて、その二つが最後には見事に一つにつながります。

CD-ROMは宇宙艦隊の士官訓練用ホロデッキ・シミュレーションとうたわれているわけですが、つまり、ここでガウロンが話して聞かせた物語を基につくられたことになっています。(しかもライカー副長が監修をします。現実の世界でCD-ROMの各場面の監督を務めたのはジョナサン・フレークスです。)

酒場の亭主を脅して情報を聞き出したり、謎めいた女性歌手が登場したりして、これは本当にスタートレックなのか、それとも安っぽいアクション小説なのかと思ってしまうところもあります。

さてここで注目したいのは、このクリンゴンを主題とした小説には、そこかしこにクリンゴン語が散りばめられているということです。しかも特に解説/注釈等はないので、クリンゴン語の知識がないと意味不明な部分もあります。読む時には英和辞典と「THE KLINGON DICTIONARY」が必要です。(特になくても物語の理解に支障はないでしょう。)

しかし、そのどれもが単語レベルに過ぎず、また綴り間違いや勝手な造語も多いのが少々残念です。せめて、Rite of Ascensionの場面や、隠蔽装置(cloaking device)の作動の命令くらいはクリンゴン語を使ってほしい気がします。

巻末にはCD-ROMの制作についての記事も載っています。

ところでCD-ROMの方はもう発売されているのでしょうか? Win版は出たとか、Mac版はまだとか、どうも不確かです。いづれにしても私の愛機Macintosh LCIIIでは「音声認識」が出来ないみたいで残念です。


【本の情報】
題名STAR TREK: KLINGON!
著者Dean Wesley Smith, Kristine Kathryn Rusch
出版社POCKET BOOKS (Simon & Schuster)
ISBN0-671-00257-0
値段$5.99(千円位)

bIlaDbe'chugh vaj bIHegh !
Qapla' !


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Ver.2 Jul 28th. 1996